相続における生前対策とは?後悔しないために今からできる準備を行政書士が解説

はじめに

「相続は亡くなってから考えればいい」


そう思っている方は非常に多いですが、

実務の現場では生前に対策をしていなかったことが原因で、

家族が争い、損をし、長期間苦しむというケースが存在します。

相続対策というと、

「相続税対策」「お金持ちの話」というイメージを持たれがちですが、

実際にはごく一般的なご家庭こそ、生前対策が必要です。

この記事では、相続実務に携わる行政書士の立場から、

  • なぜ生前対策が必要なのか
  • 生前対策にはどんな種類があるのか
  • よくある失敗例
  • いつ・何から始めるべきか

をわかりやすく解説します。

相続において生前対策が重要な理由

相続トラブルの多くは「準備不足」が原因

相続トラブルというと、

「遺産が多い家の話」と思われがちですが、

実際に揉めているのは遺産総額が数千万円以下の家庭が大半です。

理由はシンプルで、

  • 不動産が1つしかない
  • 現金がほとんど残っていない
  • 誰が何を相続するか決まっていない

といった状況で相続が始まると、

感情の対立が表面化しやすいからです。

「うちは兄弟仲がいいから大丈夫」


この言葉ほど、相続現場で裏切られるものはありません。


法定相続分どおり=安心ではない

民法では「法定相続分」が定められていますが、

これはあくまで最低限のルールです。

  • 親の介護をしていた子
  • 同居して家計を支えていた子
  • ほとんど関わりのなかった子

これらの事情は、法定相続分では一切考慮されません。

結果として、
「気持ちの整理がつかない」
「不公平だと感じる」
という不満が、争いへと発展していきます。

生前対策とは何か?3つの柱を理解する

相続における生前対策は、大きく分けて次の3つがあります。

① 遺産分割対策

→ 誰に・何を・どのように相続させるか

② 相続税対策

→ 相続税を減らす、納税資金を確保する

③ 判断能力低下(認知症)対策

→ 元気なうちに財産管理の方法を決めておく

多くの方は①だけを考えがちですが、

②と③を無視した生前対策は不完全です。

遺産分割対策の中心は「遺言書」

遺言書があるだけで相続は劇的に変わる

相続対策の中で、最も効果が高いのが遺言書の作成です。

遺言書があるだけで、

  • 相続人全員の話し合いが不要になる
  • 誰が何を相続するかが明確になる
  • 手続きがスムーズに進む

という大きなメリットがあります。


遺言書の種類と注意点

遺言書には主に次の2種類があります。

自筆証書遺言

  • 自分で書ける
  • 費用がかからない
  • 書き方を間違えると無効になるリスクが高い

公正証書遺言

  • 公証人が作成
  • 無効になるリスクがほぼない
  • 費用はかかるが、確実性が高い

トラブル防止を重視するなら、公正証書遺言一択と言っても過言ではありません。

正解はどっち!?自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらで書くべきか

はじめに 令和2年7月10日から法務局による自筆証書遺言の保管制度がはじまり、 まもなく5年が経過します。 前回のテーマで自筆証書遺言の保管制度についての記事を書…

遺言書との違いは?エンディングノートの正しい意味と目的

はじめに:エンディングノートと遺言書、何が違うの? 「エンディングノートと遺言書、どちらを書けばいいの?」 これは終活を考える多くの方が最初に抱く疑問です。 どち…


不動産がある場合は特に注意

相続財産に不動産が含まれる場合、生前対策の重要性はさらに高まります。

  • 不動産は簡単に分けられない
  • 評価額と実際の価値が一致しない
  • 売る・売らないで意見が割れる

よくある失敗は、

「とりあえず相続人全員の共有にする」ことです。


共有不動産は、将来的に売却も活用もできない負動産になる可能性が高くなります。

不動産を複数所有している人の遺言書の書き方

はじめに:不動産が複数ある人ほど「遺言書」は重要です 相続トラブルの多くは「不動産の分け方」が原因です。 特に、土地や建物を複数所有している方の場合、 「誰にどの…

相続税対策は「早く・無理なく」が基本

相続税がかかるかどうかの判断

「うちは相続税なんて関係ない」と思っていても、

実際に計算すると課税対象になるケースは少なくありません。

  • 不動産評価
  • 預貯金
  • 生命保険

これらを合算したうえで、基礎控除を超えるかどうかを判断します。


生前贈与の正しい考え方

生前贈与は相続税対策として有効ですが、

やり方を間違えると逆効果になります。

  • 贈与契約書がない
  • 実質的に親が管理している
  • 名義だけ子ども

このようなケースは「名義預金」と判断され、

相続財産に戻される可能性があります。

生前贈与は、必ず記録を残し、継続性と実態を伴わせることが重要です。


認知症対策は相続対策とセットで考える

判断能力が低下するとできなくなること

認知症などで判断能力が低下すると、

  • 遺言書の作成
  • 不動産の売却
  • 預貯金の引き出し

これらがほぼできなくなります。

「相続対策をしようと思った時には、もう遅かった」


という相談は、決して珍しくありません。


任意後見・家族信託という選択肢

元気なうちであれば、

  • 任意後見契約
  • 家族信託

といった制度を利用し、将来に備えることができます。

ただし、誰にでも向いている制度ではないため、

家族構成・財産内容を踏まえた設計が必要です。

法定後見との違いを徹底解説!任意後見のメリット・デメリット

はじめに:自分らしい「老後の安心」を選ぶ時代に 近年、高齢化の進展とともに 「認知症による判断能力の低下」に備える制度として、 任意後見制度への関心が高まっていま…

任意後見契約書の文例と作成のポイント~自分の将来を守るために知っておきたい実務知識~

はじめに:老後の安心は「契約書の内容」で決まる 近年、おひとりさまの高齢者増加に伴い、 「任意後見契約書を作りたい」という相談が増えることが予想されます。 しかし…

生前対策でよくある失敗例

実務で多い失敗をいくつかご紹介します。

  • ネットの雛形で遺言を書いて無効になった
  • 特定の相続人にだけ相談して不信感を生んだ
  • 節税ばかり考えて家族関係を壊した
  • 「まだ早い」と先延ばしにして間に合わなかった

生前対策は、完璧を目指す必要はありませんが、放置するのが一番危険です。


行政書士に相談するメリット

相続の生前対策は、

  • 法律
  • 家族関係
  • 不動産
  • 税金

が複雑に絡み合います。

行政書士は、

  • 全体像を整理する
  • 必要な書類を作成する
  • 他士業と連携する

という立場で、最初の相談窓口として適した専門家です。


まとめ|生前対策は「家族への思いやり」

相続の生前対策は、


「財産の話」ではなく、家族への思いやりです。

  • 争わせないため
  • 困らせないため
  • 安心してもらうため

完璧な対策でなくても構いません。


まずは「現状を整理すること」から始めてみてください。