耕作放棄地とは?行政書士が法律・制度・活用方法を解説

目次
はじめに
近年、「耕作放棄地」という言葉を耳にする機会が増えています。
相続で農地を引き継いだものの使い道が分からない方、
農業をやめた後の土地管理に困っている方、不動産活用を検討している方にとって、
耕作放棄地は大きな悩みの種となっています。
この記事では、行政書士の視点から、
耕作放棄地の法律的な位置づけ、関連制度、放置した場合のリスク、
そして適法な活用・解決方法について詳しく解説します。
耕作放棄地とは何か【法律上の定義】
まず重要なのは、
「耕作放棄地」という言葉は農地法に明確な定義がある用語ではないという点です。
実務上、耕作放棄地とは次のような農地を指します。
- 以前は耕作されていたが、
- 現在は1年以上作物の作付けが行われておらず、
- 今後も耕作の意思が見られない農地
行政や統計では、農林水産省が「耕作放棄地」を
「以前耕作していた農地で、現在耕作しておらず、今後も耕作の予定がない土地」
と定義しています。
ここで注意すべき点は、
登記簿上が「畑」「田」である限り、
見た目が荒れていても法律上は「農地」だということです。
耕作放棄地と農地法の関係
耕作放棄地を理解する上で、避けて通れないのが農地法です。
農地法の基本原則
農地法は一言で言えば、
農地は、農地として利用されるべきである
という思想に基づいています。
そのため、以下の行為には原則として許可が必要です。
- 農地を売買・贈与・賃貸する
- 農地を宅地や駐車場、太陽光発電用地などに転用する
耕作放棄地であっても、
農地である以上、農地法の規制は一切緩和されません。
「何年も使っていないから自由にしていい」という考えは、法律上は誤りです。
耕作放棄地を放置するとどうなるのか【リスク】
耕作放棄地を放置した場合、次のようなリスクが発生します。
① 農業委員会からの指導・勧告
農業委員会は、地域の農地利用状況を定期的に調査しています。
耕作放棄地と判断されると、
- 利用意向調査
- 指導・助言
- 場合によっては勧告
が行われることがあります。
② 固定資産税の増加リスク
一部の耕作放棄地は、管理不全農地と判断されると、
固定資産税の軽減措置が解除される可能性があります。
③ 近隣トラブル
雑草の繁茂、害虫・害獣の発生、不法投棄など、
放置された農地は近隣住民とのトラブルの原因になりがちです。
相続で取得した農地が耕作放棄地になるケース
近年特に多いのが、
相続をきっかけに耕作放棄地が発生するケースです。
- 相続人が農業をしない
- 遠方に住んでいる
- 農地の場所や境界が分からない
このような場合でも、相続登記が完了すると、
農地の管理義務は相続人に移ります。
「とりあえず放置」は、
将来的に大きな問題を生む可能性があります。
耕作放棄地の主な解決・活用方法【合法的に】
耕作放棄地には、いくつかの合法的な解決策があります。
① 農地として再利用する
- 新規就農者への貸付
- 農地中間管理機構(いわゆる農地バンク)の活用
農地としての利用を継続する場合、農地法の趣旨にも合致します。
② 農地転用(農地法4条・5条)
宅地、駐車場、資材置場、太陽光発電などに利用する場合は、
農地転用許可または届出が必要です。
特に市街化調整区域では、転用の可否判断が非常に厳しく、
専門的な法的判断が不可欠です。
③ 売却・贈与
農地を売却する場合でも、
相手が誰でもいいわけではありません。
- 原則:農業を行う者
- 農業委員会の許可が必要
不動産取引と農地法の両方の知識が求められます。
行政書士が耕作放棄地問題でできること
耕作放棄地の問題は、
「相続」「農地法」「都市計画法」「不動産」が複雑に絡み合います。
行政書士は、次のような業務を通じて支援が可能です。
- 農地法許可・届出書類の作成
- 農業委員会との事前相談・調整
- 相続と農地の整理に関する助言
- 活用方法の法的整理
特に、「そもそも何ができて、何ができないのか」を
法的に整理する役割は行政書士の専門分野です。
耕作放棄地は「放置」ではなく「整理」する時代へ
耕作放棄地は、単なる使われていない土地ではありません。
法律上は厳格に管理される「農地」であり、
誤った判断は将来の大きな負担につながります。
一方で、適切な手続きを踏めば、
- 有効な土地活用
- 不要な農地の整理
- 相続トラブルの予防
といった前向きな解決も可能です。
農地転用できる土地・できない土地の見分け方
農地転用とは、
農地を農地以外の用途(宅地・駐車場・資材置場・太陽光発電用地など)に変更することをいいます。
重要なのは、
- 現在耕作しているかどうか
- 荒れているかどうか
ではなく、
登記簿・現況・法令上「農地」と判断されるかどうかです。
見た目が雑草だらけでも、法律上は農地である限り、
農地転用の手続きが必要になります。
農地転用できるかどうかは、次の順番で判断します。
- その土地は「農地」に該当するか
- 都市計画区域の区分はどこか
- 農業振興地域(農振)に含まれているか
- 農地区分(第1種・第2種・第3種農地)
- 転用目的・利用計画は適切か
このうち、どこか1つでも「不可」と判断されると、
原則として転用はできません。
【最重要】都市計画区域での見分け方
まず最初に必ず確認すべきなのが、都市計画区域の区分です。
① 市街化区域の農地
市街化区域内の農地は、
原則として農地転用が可能です。
- 転用は「許可」ではなく「届出」
- 比較的スムーズに進む
- 住宅・駐車場・店舗などに使いやすい
行政書士実務では、
「市街化区域かどうか」で難易度が大きく変わります。
② 市街化調整区域の農地
一方、市街化調整区域は、
原則として建物を建ててはいけない区域
です。
この区域の農地は、
農地転用が非常に難しい、または不可能なケースが多いです。
- 転用は「許可制」
- 都市計画法の制限が厳しい
- 農地法だけでなく都市計画法もクリアする必要あり
農業振興地域(農振)に入っているか
次に確認すべきなのが、
農業振興地域農用地区域内農地(いわゆる「農振」)に含まれているかどうかです。
農業振興地域農用地区域内農地とは
- 将来にわたって農業利用を守るべき区域
- 国・自治体が「農地として使い続ける」と決めている土地
この区域に入っている農地は、
原則として農地転用はできません。
農振除外ができれば転用できる?
「農振除外」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
確かに、
農振農用地区域から除外できれば、次のステップに進めます。
しかし実務上は、
- 除外要件が非常に厳しい
- 時間がかかる(半年〜1年以上)
- 必ず通るわけではない
という点に注意が必要です。
農地区分による見分け方(第1種・第2種・第3種)
農地は、立地条件によって次のように区分されます。
第1種農地
- 良好な営農条件
- 集団的に広がる農地
- 原則として転用不可
→ほぼ転用できない
第2種農地
- 将来的に市街化が見込まれる
- 周辺に住宅や道路がある
→ 一定条件下で転用可能
第3種農地
- 住宅地・市街地に近接
- インフラ整備済み
→ 転用しやすい
行政書士の実務では、
第3種農地かどうかが一つの目安になります。
転用目的によって「できない」ケースもある
土地の条件が良くても、
転用の目的が不適切だと不許可になることがあります。
例として、
- 利用計画が不明確
- 資金計画が成り立っていない
- 単なる投機目的
- 周辺農地に悪影響がある
このような場合、
「場所は良いのに許可が下りない」という結果になり得ます。
行政書士に相談すべきタイミング
次のような場合は、
必ず契約前・造成前に行政書士へ相談すべきです。
- 農地を売却したい
- 相続した農地を処分したい
- 駐車場や太陽光に使いたい
- 市街化調整区域の農地がある
行政書士は、
「この土地は転用できるのか」を法的に整理する専門家です。
耕作放棄地の主な活用事例
① 新規就農者への貸付・マッチング
最も王道ともいえる活用方法が、
新規就農者や法人への貸付です。
活用の流れ
- 農業委員会や農地バンクに相談
- 利用希望者とのマッチング
- 農地法3条の許可を取得
- 賃貸借契約を締結
メリット
- 農地の地目を維持できる
- 固定資産税が安いまま
- 地域農業への貢献につながる
特に「自分ではもう耕作できないが、農地は守りたい」という方に選ばれています。
② 太陽光発電(営農型・非営農型)
耕作放棄地の活用として、近年非常に相談が多いのが太陽光発電です。
主な2パターン
- 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)
- 農地転用を伴う太陽光発電
営農型であれば、
農地としての利用を続けながら発電事業が可能です。
注意点
- 農地法許可(4条・5条)が必要
- 営農計画の作成が必須
- 地域や農業委員会の判断が厳しい場合もある
法的なハードルは高いものの、
成功すれば安定収入につながる事例が多いのも事実です。
③ 観光農園・体験型施設への転換
耕作放棄地を活用して、
- ブルーベリー狩り
- 体験農園
- 市民農園
といった観光・体験型農業に転換する事例も増えています。
ポイント
- 農地としての利用を継続できる
- 小規模でも始めやすい
- 地域活性化と相性が良い
「本格的な農業は難しいが、管理はできる」という方に向いています。
④ 資材置場・駐車場(農地転用)
立地条件によっては、
- 資材置場
- 駐車場
- 倉庫用地
として活用されるケースもあります。
ただしこの場合、
👉 農地転用が必須です。
注意点
- 市街化調整区域では難しいケースが多い
- 農振農用地は原則不可
- 周辺農地への影響が重視される
「活用できるかどうか」は、
机上の判断ではなく、個別調査が不可欠です。
⑤ 売却による資産整理
「管理ができない」「相続予定がある」場合は、
売却による整理も一つの選択肢です。
実務上のポイント
- 農地のまま売却できるか
- 買主が農業従事者か
- 農地法3条許可の可否
耕作放棄地でも、
条件が合えば意外と需要があるケースもあります。
耕作放棄地活用で失敗しやすいポイント
- 見た目だけで「使えない」と判断する
- 許可が不要だと勘違いする
- 業者任せで進めてしまう
- 農業委員会との事前相談をしない
耕作放棄地の活用は、
法律・制度を理解しているかどうかで結果が大きく変わります。
まとめ
- 耕作放棄地でも農地法の規制はそのまま適用される
- 放置すると行政指導や税務リスクが生じる
- 相続をきっかけに問題化するケースが非常に多い
- 解決には農地法・相続・不動産の知識が不可欠
耕作放棄地は、
放置すれば固定資産税と管理負担だけが残ります。
一方で、
- 農業
- 発電
- 観光
- 売却
など、正しい選択をすれば価値を生む資産にもなります。
「この土地は使えるのか?」
「転用できる可能性はあるのか?」
そうした疑問こそ、
専門家に相談することで初めて答えが見える分野です。


