売買契約後2週間以内!国土利用計画法の届出を忘れてはいけない理由

はじめに

土地の売買契約を結んだあとに、

不動産会社や司法書士から


「国土利用計画法の届出が必要です」と言われることがあります。

聞き慣れない手続きですが、

これは法律で義務付けられている届出です。

提出を怠ったり、期限を過ぎてしまうと勧告・公表の対象となることもあります。

この記事では、

郡山市を中心に土地取引の届出をサポートしている行政書士が、


「国土利用計画法の届出とは何か」「いつ・誰が・どこに出すのか」をわかりやすく解説します。

国土利用計画法とは?

「国土利用計画法」(略して「国土法」)は、


1974年に制定された土地取引の健全化を目的とする法律です。

1970年代初頭、日本は高度経済成長の真っただ中にあるなか、


工業化・都市化が急速に進み、都市周辺では宅地需要が急増しました。

これに目をつけた企業や個人投資家によって、


土地を転売して利益を得る」=土地投機が全国的に広がりました。

とくに首都圏・大阪圏・名古屋圏では、


「山をまとめて買って造成し、すぐ転売」「農地を安く買って値上がり待ち」


といった取引が横行し、地価が急騰したことで地価の高騰や投機的取引が全国的に問題となり、


その反省から

「大規模な土地取引は行政に届出させる」仕組みが作られました。

地価の高騰、投機的取引は以下のような問題を引き起こします。

■ 問題点①:地価の上昇による生活不安

地価が上がることで、

  • 一般の人が住宅用地を買えなくなる
  • 家賃が上がる
  • 固定資産税の負担が増える

といった生活上の弊害が発生。

■ 問題点②:土地の乱開発と環境破壊

投機目的の開発により、

  • 計画性のない宅地造成
  • 農地・森林の無秩序な転用
  • 洪水・土砂崩れなどの災害リスク増大

といった弊害が各地で発生。

つまりこの制度は、

“大きな土地取引の動きを行政が把握し、土地利用の適正を保つ”ためのチェック機能といえます。

届出が必要となるケース

ではどのような取引が対象となるのでしょうか。

それは契約により、土地の権利(所有権・地上権・賃借権など)を移転または設定する場合です。

たとえば以下のようなケースが対象になります。

土地の売買契約を締結した

土地を交換した

土地の賃貸借契約を長期間で結んだ

信託受益権の移転をした

しかし面積要件があり、

以下の要件に該当する場合のみ届出が必要となります。

区分面積要件
市街化区域2,000㎡以上
市街化調整区域5,000㎡以上
非線引き都市計画区域5,000㎡以上
都市計画区域外10,000㎡以上(自治体により異なる)

これは郡山市においても同様です。

市街化区域、市街化調整区域といったワードがここで出てきましたので、

簡単にご説明します。

市街化区域と市街化調整区域

まず市街化区域です。

市街化区域とは、

都市計画法第7条第1項に基づき定められる区域で、

すでに市街地を形成している区域および、

今後概ね10年以内に、

優先的・計画的に市街化を図る区域」のことをいいます。

つまり

・すでに住宅・商業施設などが整っているエリア

・将来的に道路・上下水道などの都市インフラを整備して、市街地を広げていく予定のエリア
を指します。

次に市街化調整区域です。

市街化調整区域都市計画法第7条第1項に基づいて指定される区域で、

「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。

自然や農地を守り、無秩序な開発を防ぐために設定されており、


原則として新たな建築や開発ができません。

まとめると以下の通りです。

都市計画法では、原則として「都市計画区域」を次の2つに区分します。

区分意味開発・建築の扱い
市街化区域すでに市街地になっている/今後10年以内に整備する区域原則として建築可。住宅・商業・工業など多用途に利用可能
市街化調整区域市街化を抑制すべき区域(農地や自然環境の保全)原則として建築不可

届出の期限と提出先

届出の期限は契約を結んだ日から2週間以内(契約日を含めてカウント)です。

土地の所在地を管轄する市町村長あて(郡山市の場合は郡山市長あて)に提出します。

市役所経由で福島県知事宛として処理されます。

注意したいのは「所有権移転後」に2週間ではなく、「契約後に2週間」です。

これがどういうことかというと、

不動産の契約で手付契約を行い、

まだ引き渡しが完了していない段階でも届出が必要であり、

手付契約の場合はうっかり忘れていたというケースがありますのでよく注意しましょう。

また届出の面積要件は一団の土地ではなく、

飛び地の場合も該当する場合がありますので、

独断で判断せず、担当の部署に事前に確認することをおすすめします。

届出に必要な書類

届出に必要な書類は主に下記のようなものになります。

  1. 届出書
  2. 売買契約書の写し
  3. 地形図(都市計画図等)
  4. 土地及びその付近の状況を明らかにした図面(住宅地図等)
  5. 土地の形状を明らかにした図面(公図等)

場所が特定できない場合は届出ができないため注意しましょう。

届出を怠るとどうなる?

届出をしなかった場合、あるいは虚偽の届出をした場合には、


次のような行政処分を受ける可能性があります。

・行政からの勧告(利用目的の変更など)

勧告内容が公表されることもある

・悪質な場合は50万円以下の罰金

国土法は重要な「法的書類」に該当しますので、忘れずに届出を行いましょう。

届出後は、おおむね1〜2週間程度で審査が行われ、問題なければ「受理通知書」が交付されます。

行政書士に依頼するメリット

国土利用計画法の届出は、形式が厳格であり、

訂正等があれば何度か担当の部署に確認する必要があります。

特に面積の算定方法共有地の扱い利用目的の書き方で不備があると、


補正を求められ、受理までに時間がかかります。

行政書士に依頼することで、

・届出要否の判断(面積・契約形態の確認)

・図面・登記書類の整備

・届出書類の作成・代理提出

こうした手間を省くことができます。

また、農地転用や開発許可が関係する場合には、


同時に関連法令の調整を行うことも可能です。

まとめ

土利用計画法の届出は、

✅ 「契約後2週間以内」
✅ 「面積要件を超える取引」
✅ 「届出を怠ると勧告・公表のリスク」

という3点を押さえておくことが重要です。

土地取引の際に不明点がある場合は、


早めに行政書士へ相談することで、

トラブルを未然に防ぐことができますので、

不動産取引を行い、面積要件に該当する可能性があるという場合は、

お気軽にご相談ください。