【徹底解説】農地転用の「立地基準」と「一般基準」とは?

はじめに

農地を宅地や駐車場、太陽光発電所などに用途変更する「農地転用」。


この許可を受けるためには、農地法に基づく厳格な審査が行われます。


その審査の柱となるのが、「立地基準」と「一般基準」です。

この記事では、行政書士として実務の現場から見た両基準の考え方と、

許可を得るために押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。

農地転用とは?まず押さえる全体像

農地転用は、農地を耕作以外の目的に供すること

つまり自己の土地を転用する場合は4条許可、売買や賃貸とセットで用途を変える場合は5条許可が必要です。

いずれも無断で進めると原状回復等の行政指導の対象になり得ます。

審査では「どこにある農地か(立地)」と「なぜ・どのように使うのか(一般)」の二段階で適否が判断されます。

◇「立地基準」とは ― どこにある農地か?

立地基準とは、その農地がどのような場所にあるのかに着目して、


転用を認めるかどうかを判断するための基準です。

農地はその立地条件により、主に次のように区分されます。

区分内容許可の方向
甲種農地(第1種農地)高い生産力を持つ優良農地。水利・区画整備が完備。農業振興地域内の「青地」に多い。❌ 原則不許可
第2種農地農業上重要な農地。周囲も農地が多い。❌ 原則不許可(やむを得ない場合のみ)
第3種農地市街化が進んでおり、周囲に住宅や道路が多い。✅ 原則許可

立地判定で見る具体的要素

  • 都市計画(市街化区域/市街化調整区域)
  • 農振指定(青地/白地)と農振除外の可否・見込み
  • 既存インフラ(道路・上下水道・排水)と周辺土地利用
  • 事業が公共計画と整合するか(道路計画、地区計画等)

このように、立地が農業振興地域(いわゆる「青地」)か、

市街化区域かによって、審査のハードルは大きく変わります。

特に農業振興地域農用地区域内農地(青)は、国が「農業を守る土地」として指定しているため、農振除外を経なければ転用はできません。


一方、市街化区域内の農地であれば、都市計画的にも開発が想定されており、比較的許可が得やすいのが実情です。

◇「一般基準」とは ― どんな目的で、どのように使うのか?

立地基準が「どこにあるか」を見るのに対して、


一般基準は「なぜ転用するのか、どのように利用するのか」という内容面の審査です。

一般基準では、次のような観点で審査されます。

1.審査の主な観点

  1. 目的の明確性
    住宅、資材置場、工場、太陽光など具体的であること(「将来使うかも」では不可)。
  2. 代替性の検討
    農地以外に適地がないか。なぜ当該地でなければならないかの合理的説明
  3. 実現可能性(資金・工程)
    資金計画、融資内諾、発注計画、着工・完了時期の実現性
  4. 法令整合性
    都市計画法(34条・43条等)、建築基準法、景観条例、河川・道路法との整合
  5. 営農・環境への影響
    残存農地の耕作に支障がないか、排水ルート・用水の確保、粉じん・騒音・交通量等の影響評価
  6. 維持管理・再転用リスク
    放置・不法投棄の恐れがない計画か。管理体制の明示。

2.許可を左右する「定量的」根拠

  • 面積、用途別配置、駐車台数、搬入出頻度などの数値
  • 流出抑制量、浸透トレンチ規模、排水先の技術的裏付け
  • 交通安全(見通し、歩車分離)、騒音予測等の資料

この一般基準を満たさないと、立地が良くても許可は下りません。


つまり、立地基準と一般基準は両方クリアして初めて許可されるという二段階審査なのです。

許可の可否は「立地 × 内容」で決まる

農地転用の審査は、「どこにあるか」と「どう使うか」の掛け合わせで判断されます。

たとえば次のようなイメージです。

立地内容許可の可能性
市街化区域内で住宅建設許可されやすい
青地で資材置場不許可(立地段階でNG)
白地で太陽光発電(計画不十分)立地OKでも実現性不足でNG
農振除外後の土地で農業関連施設許可される可能性あり

許可取得までの実務フロー

実務の流れをまとめます。

1.ゾーニング確認:都市計画図・農振図・地形図・排水系統を初期に確認。

2.行政ヒアリング:都市計画課・農業委員会・農政課に事前相談

3.代替性検討書:農地外候補地の有無・比較表を作成(説得力が増す)。

4.計画図の確定:配置、排水、進入路、安全対策を図示。

5.整合の同時並行:必要なら開発許可・43条許可の道筋も同時に検討。

6.影響評価の添付:用排水・交通・環境の簡易評価でも数値化する。

7.申請・補正対応:補正は1回で完結できるよう不足資料を先読み。

よくある誤解と不許可リスク

誤解①:青地でも事情を話せば通る
→ 基本は不可。まずは農振除外の可否検討が先。

誤解②:先に造成しておけば既成事実で認められる
→ 典型的な無断転用。原状回復の対象になり得る。

誤解③:立地が良ければ書類は軽くてよい
→ 一般基準の不備(排水・代替性・資金)が不許可の主因に。

誤解④:相続未登記でも誰か1人で出せる
→ 原則不可。権利者の一致(共有者全員の同意・相続関係の証明)が必要。

おわりに

農地転用の許可申請を取得するためには、

立地基準で方向性を判断し、一般基準で必要性・実現性・影響を数値で裏付ける。

青地は原則不可で白地・市街化区域では、代替性・排水・安全の三点を詰める。

補正は後追いでなく先読みで初回提出の完成度が許可スピードを決める。

これらを心得て申請に臨むと方向性が間違えることなく、進めることができます。

農地転用が不可能な場所を可能にするのはできませんが、

不可能と勘違いしていたところを許可にすることはできます。

農地転用に関してお困りの場合は、ぜひ当事務所へご相談ください。