相続した空き家を売った時に使える!?税金と被相続人居住用家屋等確認書の要件

はじめに

今回は相続した空き家を売却した時に使える「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」と、

特例に必要とされる「被相続人居住用家屋等確認書」の要件を解説します。

税金の申告については税理士の先生が担当しますが、「被相続人居住用家屋等確認書」は行政書士にて代理申請可能です。

まず特別控除と譲渡所得に関する一般原則は下記の通りです。

✅ 特別控除の概要

この制度は、相続した実家などを売却する場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できるというものです。一定の条件を満たせば適用され、譲渡所得税が大きく軽減されます。


□ 譲渡所得の計算方法(基本式)

譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除(最大3,000万円)
※譲渡価格とは売却した金額、取得費は当所物件を講習した金額、譲渡費用は売却したときにかかった経費(解体費、仲介手数料など)です

🧷 計算例(控除適用前後)

例:

  • 譲渡価格(売却価格):4,000万円
  • 取得費(被相続人が家を買った当時の価格、わからない場合は売却価格の5%で計算する):1,000万円
  • 譲渡費用(仲介手数料など):200万円

▶ 控除適用前の譲渡所得:

譲渡所得 = 4,000万円 -(1,000万円 + 200万円)= 2,800万円

▶ 控除適用後(3,000万円控除適用) ※相続人が3人以上の場合は2,000万円

課税譲渡所得 = 2,800万円 - 3,000万円 = 0円(マイナス分は切り捨て)

よって特例を利用した場合、譲渡所得税は0円になります。

▶ 通常の譲渡所得:

4,000万円 -(1,000万円 + 200万円)= 2,800万円(課税対象)

これに対して 税金が課せられるため、多額の税金を納めることになります。

上記のように特例を利用することにより、

所得税の減税が可能であり、利用要件をクリアしている場合は積極的に利用したい制度です。

しかし特例を使用したい場合、

確定申告時に税務署に「被相続人居住用家屋等確認書」を提出する必要があり、

誰でも自由に使えるわけではなく、

被相続人居住用家屋等確認書を取得するための要件をクリアする必要があります。

被相続人居住用家屋等確認書の要件

ではさっそく被相続人居住用家屋等確認書の要件を見てみましょう!

✅ 被相続人居住用家屋等確認書の要件

以下すべての条件を満たす必要があります。

① 被相続人(亡くなった人)に関する要件

  • 相続の開始直前に、1人で居住していたこと(同居人がいない)
  • 老人ホームに入所していた場合でも、一定の要件を満たす場合は可
  • 相続開始時にその家屋が「被相続人の居住の用に供されていた家屋」であること

② 家屋の構造等に関する要件

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物(旧耐震基準)
  • 区分所有建物(マンションなど)は対象外。戸建住宅が対象

③ 譲渡前の取り扱いに関する要件

  • 相続後、誰も住んでおらず、貸してもいないこと(空き家)
  • 譲渡時点で、以下のいずれかの状態になっていること:
    1. 建物を耐震改修して売却
    2. 建物を取り壊して、土地のみを売却

④ 譲渡に関する要件

  • 譲渡価格が1億円以下であること
  • 相続から譲渡までに一定の期限内であること(※一般的には相続発生の翌年1月1日以降に譲渡)

⑤ 期間制限

  • 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで

⑥賃貸に関する制限

  • 貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと 

要件はわりと厳格です。

被相続人居住用家屋等確認書は「建物付きのまま売却した場合」と「相続発生後に建物を解体して売却した場合」の2種類に分かれます。

上記②(家屋の構造等に関する要件)の要件で、

昭和56年6月1日より古い物件及び戸建て限定と対象となる物件はかなり制限されます。

さらに現況(建物付きのまま)で売却する場合、耐震補強工事を行った後に売却する場合に適用されるため、

耐震補強工事をわざわざするより、解体して更地で売却した方の方が利用しやすいのではないかと思います。

ちなみに耐震補強工事については、建築士の先生より「耐震基準適合証明」を受けることにより証明できますので、

耐震基準適合証明をクリアするための耐震補強工事がどれくらい必要になるのかについては建築士の先生の判断になります。

必要書類について

必要書類は市町村によって異なりますが、

福島県郡山市においては国土交通省の書式を使用することにより申請します。

✅ 必要書類一覧(一般的なケース)

書類名内容・備考
申請書各自治体の指定様式。市区町村役場のホームページまたは窓口で入手可。
相続人の戸籍謄本被相続人との関係(相続人であること)を確認できるもの。コピー可の自治体もあり。
被相続人の除票(住民票除票)亡くなった方の最終の住所地を確認。
建物・土地の登記事項証明書法務局で取得。相続人が所有していることを確認。
固定資産評価証明書(課税明細書)建物の建築年月日などを確認するため。市役所・区役所で取得。
耐震基準適合証明書(※必要な場合)建物を耐震改修して売却する場合に必要。指定機関が発行。
建物除却(解体)証明書(※必要な場合)建物を取り壊して土地のみを売却する場合に必要。解体業者などが発行。
空き家の使用状況に関する誓約書被相続人の死亡以降、他人に貸していない・住んでいないことを誓約。
老人ホーム入所の場合の証明書類(該当する場合)入所時の契約書や施設の証明書、ケアプランなど。

上記はざっくりとした内容になっていますので、制度の概要や必要書類の詳細は下記URLより確認が可能です。

【国土交通省 制度の概要】

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html

【制度の概要②】

【国税庁 税金の概要】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

おわりに

繰り返しになりますが、

本テーマは税金の特例を利用するために必要な書類のひとつである「被相続人居住用家屋等確認書」の話であり、

税金の話は一般原則になります。

個別に税額を計算する場合は、行政書士により計算することはできません。

そして行政書士はその他の控除(住宅ローン控除)との併用については詳しくないこともありますので、

税金に関しては税理士の先生に確認されるのが一番です。

被相続人居住用家屋等確認書については税理士の先生は詳しくないこともありますので、

被相続人居住用家屋等確認書の相談に関しては行政書士にお任せください。

相続開始の日から3年以内と期間の制限もあり、

その間に遺産分割協議や建物の解体、そして物件の売却と進めていかなければならないため、

1日でも早く要件の確認ぐらいはしたいところです。

本テーマに関するご相談については当事務所にて承っておりますので、ぜひご相談ください。