親族間売買でも農地法3条は必要?知らないと危険な農地取引の落とし穴

はじめに

「親から子へ農地を売るだけだから、手続きは簡単だろう」


「兄弟間の売買なら、農地法の許可はいらないのでは?」

相続や家族間の土地整理の場面で、このような誤解は多く見られます。


しかし結論から言うと、

親族間売買であっても、原則として農地法3条の許可は必要です。

本記事では、

  • 農地法3条とは何か
  • なぜ親族間でも許可が必要なのか
  • 例外的に不要となるケース
  • 許可を取らずに売買した場合のリスク
  • 実務でよくある失敗例

を中心に実務視点で解説します。

農地法3条とは何か?

農地法3条とは、

農地の権利を移転・設定する際に必要な許可を定めた規定です。

具体的には、以下のような行為が対象になります。

  • 農地の売買
  • 贈与
  • 交換
  • 賃貸借
  • 使用貸借

つまり、所有権や使用権が他人に移る行為全般が農地法3条の対象です。

重要なのは、
「対価があるかどうか」「親族かどうか」は関係ないという点です。

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なぜ親族間でも農地法3条が必要なのか?

農地法の最大の目的は、


「農地を守り、農業を継続させること」です。

そのため農地法では、

  • 農地を取得する人が
  • 実際に農業を行えるのか
  • 適切に管理できるのか

という点が厳しくチェックされます。

ここで重要なのが、
親族=農業ができるとは限らない
という考え方です。

たとえば、

  • 農業経験がない会社員の子ども
  • 遠方に住んでいる兄弟
  • 将来も農業をする予定がない相続人

これらの場合、

親族であっても「農地を適切に利用できない」と判断されれば、許可は下りません。

親族間売買でも農地法3条が必要な典型例

以下のケースは、ほぼ確実に農地法3条許可が必要です。

親から子へ農地を売却する場合

「相続対策として売買にしたい」という相談は非常に多いですが、
売買である以上、農地法3条許可が必要です。

兄弟姉妹間で農地を売買する場合

たとえ実家の農地であっても、
所有者が変わる=権利移転のため、許可対象になります。

親族に無償で農地を譲る場合(贈与)

贈与であっても、農地法3条の対象です。


「お金が動かないから大丈夫」というのは完全な誤解です。

農地法3条が不要となる例外ケース

では、親族間であれば絶対に必要なのかというと、そうではありません。


例外的に許可が不要なケースも存在します。

相続による取得

相続(遺産分割を含む)によって農地を取得する場合、


農地法3条の許可は不要です。

ただし注意点として、

  • 相続後に「届出」は必要
  • 取得後の農地利用状況はチェックされる

という点は押さえておく必要があります。

包括遺贈による取得

遺言による包括遺贈の場合も、


原則として許可は不要です。

ただし、特定遺贈の場合は扱いが異なることがあるため、事前確認が必須です。

包括遺贈と特定遺贈の違い【比較表】

項目包括遺贈特定遺贈
意味遺産の全部または一定割合を包括的に遺贈すること特定の財産を指定して遺贈すること
遺言の書き方例「全財産の2分の1をAに遺贈する」「○番の農地をAに遺贈する」
法的な立場相続人に準じた立場相続人ではない第三者
相続放棄可能不可
遺産分割協議原則として参加する原則として参加しない
債務(借金)の承継割合に応じて負担する原則として負担しない
農地法3条の許可不要(相続と同様の扱い)必要になる場合がある
登記手続き相続登記に準じて行う遺贈を原因として行う
実務上の注意点債務も引き継ぐ点に注意農地・不動産では許可要否に注意

農地法3条を取らずに売買したらどうなる?

「親族間だし、バレないだろう」
「とりあえず登記だけしてしまおう」

こうした判断は、非常に危険です。

売買契約が無効になる可能性

農地法3条許可を得ないまま行った売買は、


法律上、無効と判断される可能性があります。

つまり、

  • お金は払った
  • 登記もした

それでも「売買が成立していない」と扱われるリスクがあるのです。

農地法3条許可でチェックされるポイント

親族間売買であっても、審査内容は通常と同じです。

取得者が農業を行えるか

  • 農業経験
  • 農機具の有無
  • 労働力

取得後も農地として利用するか

  • 宅地化の予定はないか
  • 倉庫や駐車場にしないか

農地の面積要件

  • 下限面積(地域ごとの設定)を満たすか

親族だからといって、審査が甘くなることはありません

親族間売買を選ぶ前に考えるべきこと

実務上よく感じるのは、
「本当に売買である必要があるのか?」
という点です。

相続で足りるケースも多い

相続で取得すれば、

  • 農地法3条許可は不要
  • 手続きも比較的シンプル

というメリットがあります。

売買にすると税務リスクも

親族間売買は、

  • 低額譲渡
  • みなし贈与

といった税務上の問題が生じやすく、農地法以外のリスクも増えます。

行政書士に相談するメリット

農地法3条は、
「条文を読めば誰でも分かる」
というものではありません。

  • 地域ごとの運用差
  • 農業委員会の考え方
  • 事前相談での調整

これらを踏まえて進めないと、時間だけが無駄になることも珍しくありません。

特に親族間売買は、


「簡単だと思っていたのに、実は一番面倒だった」


というケースが非常に多い分野です。

まとめ|親族間売買でも農地法3条は原則必要

最後にポイントを整理します。

  • 親族間売買でも、原則として農地法3条許可は必要
  • 親族だからといって例外にはならない
  • 相続・包括遺贈は許可不要
  • 無許可売買は無効リスクが高い
  • 事前相談が何より重要

農地は「家族の土地」ではなく、
法律上は「守るべき資源」として扱われています。

だからこそ、
「親族間だから大丈夫」
という思い込みこそが、最大の落とし穴です。

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