空き家問題を解決するための行政書士の役割

目次
はじめに
近年、日本全国で空き家が急増しています。
総務省の調査によると、空き家率は全国で約14%に達し、
7軒に1軒が空き家という時代に突入しています。
郡山市や福島県内でも、相続をきっかけに誰も住まなくなった住宅や
農村部で使われなくなった古民家が増えています。
空き家を放置すると、
・建物の老朽化による倒壊リスク
・不審火や犯罪の温床化
・景観や衛生面での悪影響
など、地域社会全体に悪影響を及ぼします。
こうした空き家問題に行政書士がどのように関わり、
解決をサポートできるのかを解説します。
行政書士が関わる「空き家問題」とは
行政書士は、法律・許認可・契約・相続の手続きを扱う専門家です。
空き家問題の背景には、主に以下の3つの要因があります。
相続手続きの未完了
→ 名義変更されないまま、相続人不明の状態。固定資産税・管理の負担
→ 相続人が県外に住んでおり、管理できない。活用方法が分からない
→ 売却・賃貸・解体・再利用などの判断がつかない。
これらはいずれも「法的な手続き」や「行政との調整」が必要になるため、行政書士の出番です。
行政書士ができる具体的サポート
① 相続・名義変更のサポート
空き家の多くは、相続が未完了で登記名義が放置されているケースです。
行政書士は、以下のような手続きを通じて相続の整理を支援します。
・相続人調査、戸籍収集
・遺産分割協議書の作成
・名寄帳、固定資産評価証明書の取得
・登記前の書類整備(司法書士連携)
2024年4月からは「相続登記の義務化」が始まりました。
相続人が登記を怠ると、10万円以下の過料を科される可能性があります。
今後は、行政書士による「相続+空き家整理」支援の需要がますます高まるでしょう。
② 空き家活用・売却の支援
福島県では、空き家の再利用を促進する制度が整っています。
行政書士はこれらを活用し、所有者が有利に手続きを進められるよう支援します。
・空き家バンク登録など各団体の登録で必要な書類の作成
・売買契約・賃貸契約に関する契約書作成
・農地付き住宅の農地転用許可手続き
・空き家解体や補助金の申請代行
郡山市の「空き家等対策計画」では、
老朽化した住宅の除却費用に対して最大100万円の補助が出る場合があります。
また、福島県の「空き家バンク」制度を利用すれば、移住希望者とのマッチングも可能です。
行政書士が関わることで、各種書類の不備や申請遅れを防ぎ、スムーズに支援制度を活用できます。
③ 空き家管理契約・委任契約
所有者が県外に住んでいる場合、空き家の管理が難しくなります。
行政書士は、所有者との間で「管理委任契約」を締結し、
定期的な見回りや管理業務を代行できます。
・管理契約書・委任契約書の作成
・所有者に代わる近隣対応(苦情処理など)
・写真付きの管理報告書作成
・解体・修繕業者への発注支援
法的根拠に基づいた契約を行うため、
所有者も安心して管理を任せられる点が特徴です。
近年は、「空き家見回りサービス」や「管理報告サポート」を行政書士が手掛ける事例も増えています。
郡山市の「空き家等対策計画」とは
郡山市が策定している「郡山市空家等対策計画」とは、
市内における空き家の増加・老朽化・管理不全といった課題を整理し、
適正管理・利活用・除却などを通じて、
安全・安心なまちづくりを進めるための基本的な計画です。
この計画は、国の「空家等対策の推進に関する特別措置法」を受けて、
市としてどのように空き家対策を進めるかを定めたもので、
対象となる空き家の把握、管理ガイドライン・指導体制、利活用支援などを包括しています。
要点は下記の通りです。
主な内容・ポイント
- 実態調査・空き家数の把握
郡山市では、市域全体を対象とした空き家実態調査を実施し、例えば「令和2年3月時点で空き家数1,826棟」との把握がされております。
この調査に基づき、どの地域・どのような状況の空き家が課題になっているかを整理しています。- 管理不全空き家への対応
適正な管理がなされていない空き家について、市が指導・勧告・必要な場合は代執行も視野に入れるという枠組み。これは国の特措法にもとづくものです。
所有者が遠方に住んでいる、管理できないという理由で放置されている物件が多いため、行政・まちづくりの観点から優先的に対応するようになっています。- 利活用・再生促進
空き家を「ただ解体する」だけでなく、地域の資源として再活用(住まい・交流スペース・事業用途等)する流れを促進しています。
利活用のための改修や用途転換支援が盛り込まれています。- 解体・除却支援
老朽化が著しい空き家については、倒壊・近隣被害のリスクを抱えるため、除却(解体)を促進し、そのための補助金制度も用意されています。- 協働・地域連携・意見募集
計画策定時には市民からのパブリックコメントを実施するなど、地域の関係者を巻き込んだ取り組みがなされています。
なぜこの計画が重要か?
- 空き家は まちの安全・景観・資産価値 に直接影響を与えます。倒壊や放火などのリスクも高く、地域住民の安心・安全を守るための対策が不可欠です。
- 所有者が遠方にいて管理できない、相続登記がされていないなど法務・税務・不動産の複雑な問題が絡むことが多いため、行政として「誰が/どう管理するか」という制度的・体制的な対応が必要です。
- 空き家を「使われない資産」から「地域資源」へと転換することで、移住・定住促進・地域活性化という観点からも期待されています。郡山市においても、利活用支援がうたわれています。
行政書士が地域と連携する空き家対策
空き家問題は一人で解決できるものではありません。
当事務所は不動産会社・建築士・司法書士・税理士・市役所担当課などと連携して、
ワンストップの体制を作りサポートしています。
連携の具体例
分野 協力先 役割 不動産 不動産会社 売却・活用提案、査定 建築・解体 建築士・工務店 リフォーム・解体の見積もり 税務 税理士 相続税・譲渡所得税対策 登記 司法書士 所有権移転登記、相続登記 行政 郡山市・県担当課 補助金・空き家バンク調整 行政書士は、これらの関係者をつなぐ「法的コーディネーター」として、所有者の負担を軽減しながら最適な解決策を導きます。
この連携の「窓口役」となれるのが行政書士の強みです。
郡山市・福島県の空き家対策制度を活かす
郡山市や福島県には、空き家対策を支援する制度があります。
・郡山市空き家等対策計画
→ 老朽空き家の除却補助金、活用相談窓口・福島県内の空き家バンク制度
→ 登録・マッチング支援・解体工事補助制度(郡山市)
→ 最大100万円の補助あり(条件付き)
これらを利用する際、必要な書類(委任状、契約書、計画書など)の作成を行政書士が代行することで、
スムーズな申請が可能になります。
まとめ:行政書士は「空き家問題のかかりつけ専門家」
空き家問題は、「相続」「不動産」「農地」「行政手続き」が複雑に絡み合う分野です。
行政書士はそのすべてを横断的に扱えるため、
・相続手続きから売却・活用までワンストップ対応
・行政手続きや補助金申請の代行
・地域専門家との連携による包括支援
といった総合的なサポートが可能です。
郡山市や福島県のように高齢化が進み、
相続空き家が増加する地域では、行政書士の役割はますます重要になります。
空き家を「放置する資産」から「活かせる資産」へと変えるために、
地域の行政書士が果たす使命は大きいと言えるでしょう。
「空き家をどうすればいいかわからない」──
そんな悩みに、最初に寄り添えるのが行政書士です。


