え、若いのに!?今すぐ遺言書が必要な人の特徴

はじめに
本来遺言が必要人の特徴として、「高齢者」、「病気持ち」といった特徴があると思いますが、
若いけど今すぐにでも遺言を書くべき人もいますので、一通り解説できればと思います。
本テーマに該当する人は遺言書を今すぐ準備するべき人になりますので、
「自分だ!」という人は準備に取り掛かってください。
遺言を書くべき人の特徴
遺言が必要な場合は別記事で書いておりますが、
「相続トラブルが発生しそうな場合」や「相続人以外の人に遺贈したい」などの際に必要とされます。
〈遺言が必要なのはなぜ?〉
では本テーマである「遺言が必要」な場合の特徴を挙げていきます。
1. 高齢の方や健康に不安がある方
これは想定できるパターンかと思います。
- 年齢が高い方
体調の急変や認知症のリスクが高まるため、意思表示ができるうちに遺言書を作成しておくことが大切です。- 持病がある方
病気の進行や治療のリスクに備えて、早めの準備が必要です。
2. 家族構成が複雑な方
このパターンは今すぐ必要です。
- 再婚されている方
前妻・前夫との間に子どもがいる場合、法律で定められた相続分とは異なる遺産分配を希望することが多いです。- 同棲しているが婚姻届を出していない。
- 非嫡出子(婚外子)がいる方
法的な相続分とは異なる取り扱いを希望する場合、遺言書で明確にしておく必要があります。
3. 特定の財産を特定の人に渡したい方
このパターンはどこまで本気で考えているかによって遺言を書くべきか否かを判断します。
- 不動産や株式など特定の財産がある方
特定の家族や親族に渡したい場合、遺言書で指定しておくとトラブル防止になります。- ペットを飼っている方
遺言書でペットの世話を託す人や、ペットの世話にかかる費用を指定することができます。- 事業承継を考えている方
会社や事業を誰に継がせるかを明確にしたい場合も、遺言書が重要です。
4. 家族間でトラブルが予想される方
- 家族関係が複雑な方
遺産分割で揉める可能性がある場合、遺言書を作成しておくことでトラブルを未然に防げます。- 子供のいない夫婦→けっこうありそうなパターン
兄弟姉妹に相続される可能性があります。- 特定の家族と疎遠になっている方
遺産を渡したくない人がいる場合も、遺言書で明確にしておくことが必要です。
5. 早めに準備をしたいと考えている方(心配性な人)
- 将来に備えたい方
今は健康でも、いつ何が起こるか分からないため、遺言書を今のうちに作成しておくことで安心できます。
上記の2と4についてみていきます。
家族構成が複雑な方
これは若い人でも該当する人がいます。
例えば下記パターンを想定します。
・離婚していて前の相手との間に子がいる

この場合、仮に真ん中の男性(以下、男性Aとします)が死亡した場合、どうなるのか。
相続権は以下の通りです。
・再婚した配偶者が法定相続分として2分の1
・前妻の子は法定相続分として2分の1
特殊な場合を除いて前妻の子と再婚した配偶者が知り合いなはずがないですよね。
しかし相続となった場合、
遺言が無いと前妻の子と再婚した配偶者で遺産分割協議が必要になります。
なお前妻の子が未成年者の場合は、法定後見人として親(前妻)が登場し、
前妻と今の妻で遺産分割協議を行う必要が出てきます...
トラブルのもとになるのはだいたい見えてきますね。
では仮に真ん中の男性が再婚してしない場合をみていきます。

・男性は前妻の間に子がいるが親権はない
・離婚した後、再婚していない
この場合、男性Aが死亡した場合は誰に相続されるのか。
答えはなんと「前妻の子」だけ相続されます。
上の画像をみると親も相続人に入りそうな雰囲気がありますが、
相続人は子のみとなり、遺言を書かないと財産は子に相続されます。
しかし遺言があれば「親に一切の財産を遺贈する」という形で遺贈が可能です。
※この場合は遺留分に気を付ける必要があります
解説 ※詳細は別の記事で解説します
遺留分とは、法律(民法)で定められた「一定の相続人」に対して最低限保証された遺産の取得分のことです。
つまり、被相続人(亡くなった人)の遺言や贈与の内容にかかわらず、
配偶者や子、親などの法定相続人(ただし兄弟姉妹を除く)は、遺産の一定割合を必ず受け取れる権利を持っています
遺留分が認められる主な対象は、配偶者、子(または孫)、親(または祖父母)であり、
兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
たとえ遺言で「全財産を特定の人に相続させる」と書かれていても、
他の法定相続人は遺留分に相当する財産を請求できます。
遺留分の割合は、相続人の構成によって異なります。
例えば、配偶者と子が相続人の場合は、遺留分は「総体的遺留分」として遺産の1/2、
配偶者と親が相続人の場合は1/3となり、これを法定相続分に応じて分配します。
当事務所においても、遺言の文案を考える際には「遺留分」を配慮して文案を考えます。
遺留分は金銭で請求できる権利(民法第1046条)があるため、
準備をしておかないと急に請求がきてトラブルに発展する恐れもあるため、
遺言を書く場合は、なんでも好きなように書けるわけではないことを念頭におきましょう。
同棲しているが婚姻届を出していない(内縁の妻)
相続は婚姻しているか否かで権利が決まります。
同棲していて生活を共にしていても、法律上夫婦として認めてない(婚姻届を出していない)以上、
遺言がない場合、どちらかが亡くなっても、相続されることはありません。
なお相手との間に子が生まれた場合は、子は「非嫡出子」となります。
解説
非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、
法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことを指します。
この場合、母親との親子関係は出生届により当然に成立しますが、父親との間には「認知」がない限り法律上の親子関係は成立しません。
非嫡出子は、父親から「認知」されることで法律上の親子関係が認められ、
相続権も嫡出子(婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子)と同等に認められます。
認知されていない場合、父親の遺産を相続することはできません。
認知とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子ども(非嫡出子)について、
父親または母親がその子どもと法律上の親子関係を成立させるための手続きです。
母親との親子関係は、出産の事実によって当然に成立しますが、
父親との親子関係は婚姻関係がなければ「認知」がなければ成立しません。
認知が行われると、子どもと認知した父親との間に法律上の親子関係が生じ、戸籍にも父親の名前が記載されます。
子のいない夫婦
この場合の問題点は片方が亡くなった場合は、その配偶者が相続されるので問題ありませんが、
おひとりさまになった場合に、「誰に相続するのか」が問題になってきます。

子のいない夫婦は相続人は第三順位(兄弟姉妹)まで及ぶ場合が多く、
遺言を書いていないと既に兄弟姉妹で亡くなっている方がいる場合、
代襲相続人として甥・姪にまで相続される場合もあります。
図にすると↓のようになります。

余談ですが、
相続人調査を行う場合、第三順位にまで及ぶと戸籍の収集に時間がかかりますので、
相続人調査は手間と時間がかかります。
相続人が不明な場合は家庭裁判所において「不在者財産管理人」の選任申し立ての必要性も出てきます。
第三順位に及ぶ相続人調査の流れ
【ステップ 1】被相続人の出生から死亡までの「連続した戸籍」を集める
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)を集めます。
🧾 目的:
- 兄弟姉妹の情報(名前・生年月日・本籍など)を確認するため。
- 親(被相続人の父母)が誰であるかを確認するため。
【ステップ2】両親の戸籍(被相続人の親の戸籍)を取得する
- 被相続人とその兄弟姉妹は「同じ親」を持つため、親の戸籍を確認すれば兄弟姉妹の全員がわかります。
- 両親の結婚後の戸籍または除籍謄本を取得するのが一般的です。
🧾 目的:
- 兄弟姉妹の全員を網羅的に把握するため(生年月日順、死亡しているかなども確認可能)。
【ステップ 3】兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子(甥・姪)の戸籍を取得する
- 兄弟姉妹が死亡しているときは、その子(甥や姪)が代襲相続人になります。
- このため、亡くなった兄弟姉妹の「死亡記載のある戸籍」および、その子との続柄が記載された戸籍を取得する必要があります。
🧾 目的:
- 代襲相続の確認と、甥姪の特定。
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で他人に「一切の財産を遺贈する」と書けば、
遺言の記載通りに遺贈することができます。
これもひとつのポイントになります。
おわりに
すべてを解説するのは困難であるため、ありがちなパターンを抜粋して解説しました。
「遺言を書かなきゃいけないけどどうすればいいのかわからない」、「財産の変動があるからいまは書けない」など、
人には聞けない様々なお悩みがあるかとあるかと思います。
若い方だとなおさら周りに相談できないこともあるかと思います。
こうしたお悩みの解決のために当事務所がありますので、ぜひご相談ください。