寄与分と特別寄与料の違いを行政書士が徹底解説|相続で“評価される貢献”とは?

目次
はじめに|なぜ寄与分・特別寄与が相続で問題になるのか
相続の相談の中で、
感情的な対立を招きやすいテーマの一つが「寄与分」と「特別寄与料」です。
たとえば、典型例は次のようなものです。
- 親の介護を10年以上担当してきたのに、相続では兄弟と同じ扱いだった
- 自分だけが実家の農業や事業を支えたのに、法定相続分しか認められない
- 同居して面倒を見てきた自分より、遠方の兄弟が主張ばかり強い
- 義理の娘(長男の妻)が献身的に介護してきたのに評価されない
法律は「相続人の立場が平等」であることを大前提としています。
しかし、実際の家庭では、
誰が介護してきたのか、
誰が事業を支えたのか、
誰が財産を維持してきたのかは大きく違います。
その不公平を是正するために設けられているのが
寄与分(民法903条) と 特別寄与料(民法1050条) です。
本記事では、行政書士として相続実務に携わる立場から、
寄与分・特別寄与の仕組み、手続き、認められやすいケースなどを解説します。
寄与分とは?相続人の貢献を評価する仕組み
■ 寄与分の定義(民法903条)
寄与分とは、
相続人の中で特別に被相続人の財産形成や維持に貢献した人に、
その貢献分を上乗せする制度です。
寄与分は相続人にしか認められません。
つまり兄弟、子ども、配偶者、孫(代襲相続の場合)などが対象です。
■ 寄与分として認められる「5つの類型」
法律は、寄与分を次のように分類しています。
① 療養看護型(介護)
問題になりやすい類型です。
- 長期間にわたる介護
- 自宅での看護
- 入退院の付き添い
- デイサービスの送り迎え
- 夜間の見守り
「近くに住む長男が介護を担当したが、東京の兄弟と揉めている」というケースが非常に多いです。
② 労務型(家業手伝い)
農家・工務店・商店など家業がある家庭でよく問題になります。
- 無償または低額で事業を継続的に手伝った
- 経営を支える重要な役割を担った
- 親の仕事を代わりに請け負った
「家業を助けたのだから、相続で評価されるべき」という主張は認められやすいです。
③ 財産の出資型(資金援助)
- 親の事業資金を提供した
- 自宅の修繕費を負担した
- 病院代や介護用品費を負担した
これらは領収書や銀行振込記録があるほど評価されやすくなります。
④ 財産維持型(家・土地の管理)
農地や空き家の管理は寄与分として強く認められる傾向があります。
- 草刈り
- 家の修繕
- 災害の後片付け
- 農機具の整備
- 土地の維持管理
特に地方では、これが寄与分の大きな争点となります。
⑤ 扶養型(生活費を負担)
- 親の生活費や医療費を継続的に援助した
- 同居して生活を支えた
これらは“継続性”が重要です。
特別寄与料とは?相続人以外が請求できる新制度(民法1050条)
2019年7月の改正民法により誕生した制度です。
■ 特別寄与料とは?
相続人以外の親族が、
無償で特別な貢献をした場合に、相続人へ金銭請求できる制度。
対象となる例:
- 長男の妻が長期間介護した
- 婿が義父の農業を支えていた
- 親族が無償で生活の面倒をみていた
以前の法律では、相続人以外は「報われない仕組み」でした。
これを改善するため、特別寄与制度が新たに導入されました。
■ 特別寄与料の典型例
- 在宅介護
- 通院・入退院の付き添い
- 生活全般の支援
- 家事代行
- 食事・入浴の介助
介護は通常“無償”で行われるため、
法律がこれを評価しやすいように整備されたのです。
寄与分と特別寄与の違いを徹底比較|誰が対象?どう請求?
項目 寄与分(903条) 特別寄与料(1050条)
対象者 相続人 相続人以外の親族
評価内容 相続分に上乗せ 金銭請求
主張の場面 遺産分割協議 相続人に対して請求
主な類型 介護・家業手伝い・資金援助・財産管理 介護・生活支援が中心
認められやすさ 立証が必要 立証が必要だが制度は新しい
結果 相続割合が増える 請求した額が支払われる
つまり、
相続人 → 寄与分
相続人以外 → 特別寄与料
という明確な住み分けがあります。
寄与分・特別寄与が認められやすいケース5選
以下は福島県内でも想定される典型例です。
① 毎日の介護を担ったケース
- 毎日通院に付き添った
- 夜間の見守りをした
- 介護保険サービスを補完した
これは認められやすい寄与です。
② 農地の管理を担ったケース(地方実務で多い)
- 草刈り
- 農機具の手入れ
- 田植え・収穫の手伝い
農地を放置すると「荒廃農地」扱いになり、
農振除外にも影響します。
そのため、農地管理は評価が高い傾向にあります。
③ 自営業の手伝い(労務型寄与)
- 親の工務店で現場作業をしていた
- 飲食店を毎日手伝っていた
- 建設業の営業や経理を担当していた
家業を支えた寄与は金額で評価されることが多く、認定されやすいです。
④ 親の生活費を負担した(扶養型)
- 生活費を毎月送金していた
- 医療費を継続的に立替えていた
領収書があればさらに強い証拠となります。
⑤ 義理の娘・婿による献身的な介護(特別寄与)
- 長男の妻が10年間介護
- 娘婿が通院付き添い
- 同居して介護全般を担った
これは特別寄与料の典型例です。
寄与分を主張するための手続きと必要資料
寄与分は「主張すれば認められる」わけではなく、
証拠資料の準備が最重要です。
◆ 手続きの流れ
- 寄与内容を整理
- 証拠資料を集める
- 相続人間で協議
- 合意できなければ家庭裁判所の調停へ
- 調停でもまとまらなければ審判
◆ 用意すべき証拠資料の例
- 介護日誌
- 通院記録
- LINE・メールでのやり取り
- 領収書・レシート
- 写真・動画
- 金銭の送金記録
- 家業手伝いの作業記録
- 農作業の写真
- 車で送迎した際のガソリン代・レシート
証拠の多さよりも“具体性”が重要です。
特別寄与料を請求するための流れ|期限に注意
特別寄与料には手続き上の特徴があります。
◆ 手続きの流れ
- 特別寄与の内容・期間・程度を整理
- 相続人へ金銭請求
- 合意できなければ家庭裁判所へ調停申立て
- 調停 → 審判へ進むこともある
◆ 注意点:請求期限がある
相続開始(死亡)から一定期間内の請求が必要です。
特別寄与料の請求期限
特別寄与料の請求は、以下の2つの期限が定められています。
① 相続開始(被相続人の死亡)を知った時から6か月以内の請求
(短期消滅時効)
これは「死亡を知ったとき」から数える点が重要です。
▼ 例
- 5月1日に亡くなった → 当日から 6か月(11月1日)まで
- 遠方で知らず、5月10日に死亡を知った → 11月10日まで
② 相続開始のときから1年以内の請求
(長期消滅時効)
こちらは「死亡した日」そのものから1年カウントします。
▼ 例
- 5月1日に死亡 → 翌年の5月1日まで
◆ 金額の決め方
介護の難易度、期間、専門性、家族の負担度などを総合的に判断します。
行政書士は請求書の作成、寄与の整理、資料集めなどをサポートできます。
行政書士が寄与分・特別寄与の場面でできること
寄与分・特別寄与の手続きは法的な根拠が複雑で、
一般の方には難しい部分が多いです。
行政書士は次の業務を行うことができます。
◆ ① 寄与内容のヒアリング・整理
どの行為が寄与に該当するかを整理し、
主張の方向性を明確にします。
◆ ② 証拠資料の整理(説得力を高める資料づくり)
- 時系列表
- 寄与分申出書
- 特別寄与料請求書
- 支出一覧表
- 写真の整理
◆ ③ 相続人への説明資料の作成
行政書士が客観的立場で資料を作成することで、
相続人間の対立が緩和されるケースが少なくありません。
◆ ④ 遺産分割協議書の作成
合意内容を法的に有効な書面にまとめます。
※相続人同士でトラブルになった場合は関与できませんので、弁護士の先生に引き継ぎます
まとめ|寄与分と特別寄与は“争族”を防ぐ大切な仕組み
寄与分・特別寄与は、
「家族の中で特別な貢献をした人」を正当に評価するための制度です。
しかし、実際には次のような問題が起こりがちです。
- 証拠がない
- 主張の仕方がわからない
- 感情的対立で話が進まない
- 相続人以外は請求できないと誤解している
- 手続きが複雑でどこから手を付ければ良いかわからない
行政書士は、
寄与分・特別寄与の整理、資料作成、遺産分割協議書作成
などをワンストップでサポートできます。
郡山市・本宮市・須賀川市・田村市など、
福島県中通り地域で相続に関するお困りごとがあれば、
お気軽にご相談ください。
地域の実情を踏まえ、実務的・現実的な視点でサポートいたします。
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