法務局に遺言書を預けた話~後編

前編は制度の概要の話をしました。
法務省の保管申請のパンフレットがすごくわかりやすいので添付します。
後編は実際に申請した時の話をしたいと思います。
まずは電話をする
法務局の保管申請については法務局にふらっと行っても対応してもらえません(場所によっては対応してもらえるかもしれないですが)。
注意したいのは全国どこでも良いわけではなく、管轄する法務局に電話する必要があります。
調べ方は「○○○市遺言書保管申請」で調べると管轄の法務局の情報が出てくるかと思います。
電話をするときは「遺言書の保管申請をしたいです!」と伝えれば担当の方が出ますので、
電話で予約を取ります。
土日は営業していませんので平日の営業時間内に予約を取る必要があります。
予約をするのに申請などは不要です。
自筆の遺言書等を準備する
この記事は遺言書の準備ができたことが前提で書いていますが、
遺言書の作成が一番大変です!
必要書類は保管申請書と自分で書いた遺言書、財産目録と住民票を準備をします。
※住民票は3ヶ月超えていたものでも問題ありませんでした
財産目録については自筆である必要はないですが署名・捺印が必要です。
※例えば通帳の銀行名・支店名・口座番号の記載のページをコピーして、余白に氏名を書いてハンコを押すなどでも大丈夫です
保管申請書については下記URLよりダウンロード可能です。
https://www.moj.go.jp/MINJI/06.html
保管申請書については該当するところを記載するだけですのでそこまで難しくありませんが、
遺言執行者を定めるかどうかなどは遺言書の作成時に検討する必要があります。
遺言執行者の就任は未成年者・破産者以外は就任できますので、
相続人が就任することも行政書士が就任することもできます。
遺言執行者とは遺言書があった場合、遺言書通りに手続きを行う者のことであり、
遺言執行者として就任後、やらなければいけないことが民法で厳格に規定しています(民法第1006条から民法第1021条)。
※詳しくは別の記事で紹介します
銀行手続きの場合、遺言執行者の指定が無い場合、
遺言書があったとしても相続人全員の署名・捺印が必要とされる場合があって大変になりますので、
遺言書の書き方には財産を分け方以外にも工夫が要ります。
重要事項の確認と必要書類の確認!
ここまで準備できればあとは提出ですが、提出する前に重要事項を確認しましょう!
重要項目は以下の通りです。
□遺言書について
・遺言書の全文、日付、氏名の自署と押印(民法第968条第1項の要件)
・遺言書全文の自書 ボールペン等の容易に消えない筆記具を使って作成
・遺言者の署名 遺言者の氏名は,住民票や戸籍の記載どおりに記載
・遺言者の押印 押印は認印でも問題ないがスタンプ印は避ける
・遺言書の文言の変更・追加(民法第968条第3項の要件)がある場合は書き直すのがベター
・遺言書本文・財産目録には,各ページに通し番号で、ページ数を記載
・複数ページでもとじ合わせません(封筒も不要)※通常の自筆証書遺言は封筒必要です
□財産目録について
・自書によらない財産目録を添付する場合は、その毎葉(各ページ)に署名し,押印する必要がある
・自書によらない財産目録は本文が記載された用紙とは別の用紙で作成される必要がある(別紙1、別紙2などで分ける)
(ちなみに)
・平成31年1月12日以前に作成した遺言書の場合は,財産目録も自書である必要がある
□用紙のルール(法務局における遺言書の保管等に関する省令別記第1号様式)
・用紙がA4サイズで,裏面に何も記載されていないことが必要
・上側5ミリメートル、下側10ミリメートル、左側20ミリメートル、右側5ミリメートルの余白 が必要
※法務局の「遺言書保管申請のパンフレット」より

□その他の注意事項
・推定相続人以外の者に対しては,「相続させる」ではなく、「遺贈する」と記載。受遺者等は申請書に記載する必要がある
※↑は間違えやすいので表現に注意したい
・遺言執行者を指定した場合、遺言執行者を申請書に記載する必要がある。
※少し難しくて面倒な感じがしますが、基本遺言執行者は定めた方が良いです
・自書によらない財産目録についてコピーの場合は、その内容が明確に読み取れるように鮮明に写っていること
□必要書類
・遺言書
・保管申請書
・住民票 ※本籍・筆頭者記載のもの
・運転免許証もしくはマイナンバーカード
・申請費用の3,900円 ※収入印紙は法務局で購入できます
いざ法務局へ!
準備ができましたら予約した時間に法務局へ行きます。
保管申請については行政書士による代理申請ができず、本人申請に限られます。
私の管轄する法務局は「福島地方法務局郡山支局」でした。

私は登記簿謄本の取得などで法務局に行くことがありますので抵抗ありませんが、
なじみのないところで最初はけっこう緊張するかもしれません....
保管申請の部署に行きましたら別室に案内されますので、
別室の個室にて遺言書の形式の確認を取っていただきます。
私の場合は形式が問題ありませんでしたが途中で誤りがあるのに気づき、
用紙をいただき、その場で再度遺言書を書きましたので1時間半ぐらい時間を要してしまいました。
通常は1時間ぐらいで申請が完了します。
遺言書の保管後の話
保管所申請が受理されましたら、保管証が渡されます。
実際のものを添付します。※個人情報は隠していますのでご了承ください

保管証は「遺言書を預けている」という証明と「どこの法務局に預けているのか」がわかります。
保管証に関しては相続人もしくは受遺者に預けて、自分自身はコピーを保管するようにしましょう。
本来相続が発生した場合は、「遺言書が法務局に預けている事実」について相続人がわからないため、
相続人にて法務局に「遺言書保管事実証明書」の申請を行い、
保管している事実が把握すれば「遺言書情報証明書」の申請を行ってはじめて遺言の内容を確認することができます。
申請については窓口での申請も可能ですが、郵送での申請も可能です。
「遺言書保管事実証明書」の申請料は800円、
「遺言書情報証明書」の申請料は1,400円ととても安いです!
申請については全国すべての遺言書保管所で申請が可能です。
遺言書の保管証を既に持っている場合は「遺言書情報証明書」を申請するだけで証明書を取得することができます。
その他遺言書の閲覧だけしたい場合(遺言者が既に死亡しているときに限ります)や、
保管した遺言書を撤回したい場合は申請が必要になります。
遺言書情報証明書をしたい場合
遺言書情報証明書をしたい場合、
まず遺言者が死亡したあとでないと交付請求ができず、
事前に確認することはできません。
さらに申請時は検認手続きと同様に少し手間がかかります。
申請する際の必要書類は以下の通りです。
□必要書類
・法定相続情報一覧図
法定相続情報一覧図は相続人を明らかにするための書類であり、
法定相続情報一覧図を取得していない場合は、
①遺言者の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本
②相続人全員の現在戸籍(遺言者の死亡後の日付のもの)
③相続人全員の住民票(作成後3ヶ月以内のもの)
・交付請求書(申請書)
・運転免許証もしくはマイナンバーカード
・手数料(1,400円)
法定相続情報一覧図を取得する場合は、相続人を確定させる必要があるため、
どちらにせよ戸籍を確認して相続人の範囲、相続人を確定させる必要は出てきます。
このあたりに関しては専門家に依頼するなどして、対応を取る必要があるかと思います。
当事務所ではこうした遺言書保管申請の申請書の書き方から申請後のサポートを行っております。
もし遺言書保管申請の利用を検討される場合は当事務所までご相談ください。