遺言執行者とは?トラブルを防ぐために知っておきたい注意点

なぜ「遺言執行者」が重要なのか

遺言を作成しても、実際にその内容が正しく実現されなければ意味がありません。


遺言書に書かれた内容を現実の手続きとして実行するのが「遺言執行者」です。

たとえば、遺言書に「長男に土地を相続させる」「寄付を行う」などと書かれていても、

実際に登記を変更したり、預金を引き出して渡したりするのは執行者の仕事になります。


しかし、遺言執行者の選任や選び方を誤ると、相続人同士のトラブルや手続きの停滞を招くことも...。


この記事では、行政書士の立場から「遺言執行者の役割」「選び方」「注意点」について詳しく解説します。

遺言執行者とは?その役割と法的根拠

(1)法的根拠

遺言執行者は、民法第1006条〜第1021条に規定されています。


簡単に言えば「遺言の内容を実現する人」であり、

相続人や第三者に対して法的な代理権を持ちます。

(2)遺言執行者の主な職務

区分主な業務
不動産登記名義変更、評価書取得
預貯金解約・分配、残高証明取得
動産財産目録作成、引渡し
寄付・贈与受贈者への連絡・振込
官公署手続相続届出、税関係の連携
相続人対応各人への通知、説明責任

これらの手続きは法的知識と実務能力が必要であり、

単なる「相続人代表」では務まりません。

遺言執行者を定める方法

(1)遺言書で指定する

最も一般的なのは、遺言書の中で「遺言執行者に○○を指定する」と明記する方法です。


特に公正証書遺言では、

行政書士や弁護士などの専門家を指定するケースも増えています。

(2)家庭裁判所による選任

もし遺言に指定がない場合、

相続人の申立てにより家庭裁判所が選任することも可能です。


ただし時間と費用がかかり、遺産分割が遅れるリスクもあります。

遺言執行者に選ばれる人の条件

(1)資格や制限

特別な資格は不要ですが、

未成年者や破産者はなれません(民法第1009条)


相続人本人も指定は可能ですが、利害関係によりトラブルが生じやすい点には注意が必要です。

(2)実務的に適した人

  • 行政書士、弁護士、司法書士などの専門職
  • 公正中立な第三者
  • 相続人から信頼されている人物

中立性・法的知識・実行力の3つが重要なポイントです。

遺言執行者を選ぶときの注意点

(1)感情で選ばない

「長男だから」「信頼できる友人だから」と感情で選ぶと、

実務面でトラブルになりがちです。


特に遺産分割に関わる場面では、

親族間の利害が衝突しやすく、執行者の判断が批判されることもあります。

(2)専門知識がある人を選ぶ

不動産登記、金融機関手続、税金関係など、遺言執行は多方面にわたります。


行政書士など、

相続実務に精通した専門家を選ぶことでスムーズな手続きが可能になります。

(3)報酬の取り決め

遺言執行者には報酬を支払うことができます(民法第1018条)。


トラブル防止のため、

あらかじめ「報酬額」や「支払い時期」を遺言書に明記しておくことをおすすめします。

よくあるトラブル事例

❌事例①:親族を遺言執行者にした結果、相続人間で紛争に

母親が長男を遺言執行者に指定。
次男が「長男が自分に有利な形で遺産を処理している」と主張し、家庭裁判所に執行停止を申立て。
→ 結果、遺産分割が長期化し、登記・預金解約が止まってしまった。
教訓:親族は感情的対立を生みやすい。中立な専門家の選任が重要。


❌事例②:知人に頼んだが実務が進まない

生前に親しい友人を執行者に指名。
しかし友人は手続き経験がなく、銀行の対応にも不慣れ。
不動産登記の申請書を誤記して却下され、結果的に半年以上遅延。
教訓:善意でも専門知識がないと実行不可能。


❌事例③:報酬を明記していなかった

遺言に「執行者は○○行政書士」とだけ書かれ、報酬額が未記載。
相続人から「高すぎる」と反発を受け、支払い交渉に発展。
教訓:報酬はあらかじめ遺言書で明記しておく。


❌事例④:執行者が連絡を怠る

専門職を指定したが、進捗報告を怠り、相続人が不信感を抱いた。
結果、弁護士を通じて監督申立てがなされ、手続きが一時停止。
教訓:執行者は「手続の透明性」と「説明責任」を果たす必要がある。

行政書士が関わる「遺言執行者サポート」

行政書士は、依頼者の遺志を法的手続きに落とし込み、

相続人間のトラブルを防ぎながら遺言内容を実現する「中立的実務家」として関与します。

フェーズ行政書士の主な役割
遺言作成前執行者指定の助言・文案作成
遺言作成時公正証書遺言作成サポート、付随書類作成
遺言発効後執行者としての手続・報告・調整


2. 遺言作成段階でのサポート

(1)執行者指定の助言

依頼者の家族構成や財産内容をヒアリングし、


「親族を執行者にして良いのか」「専門家を指定すべきか」などを助言。


中立性・実行力・信頼性の観点から最適な執行者を設計します。

(2)遺言文案の作成

遺言の中には次のような文言を正確に記載する必要があります。

「本遺言の執行者として行政書士○○○○を指定する。」

行政書士は法律に適合した形式で文案を作成し、公証人との調整も行います。

(3)報酬・権限の明確化

報酬額・支払い時期・代理権範囲を明記しておくことで、後日の紛争を予防します。


3. 遺言執行開始後のサポート内容(実務フェーズ)

遺言が発効(=遺言者の死亡)した後、

行政書士が遺言執行者として関与する場合、以下の業務を行います。

(1)相続人・受遺者への通知

遺言の効力発生を通知し、内容を説明します。
また、関係者全員に「遺言執行者就任通知書」を送付します。

(2)財産目録の作成

民法第1011条に基づき、

遺産の全体像を明確にするための財産目録を作成します。
登記事項証明書・預貯金残高証明・有価証券一覧などを整理し、相続人へ提示。

(3)財産の名義変更・解約手続き

  • 不動産:法務局への登記申請書類作成
  • 預貯金:銀行への相続手続書類作成
  • 株式・保険:名義変更・解約書類の整備

※行政書士は登記申請代理権を持たないため、司法書士と連携して行います。

(4)官公署・金融機関との調整

金融機関、法務局、市役所、税務署など多岐にわたる窓口との調整を担当。
行政書士が関わることで、書類不備・差戻しリスクを最小化します。

(5)執行報告・清算

手続完了後、相続人に「遺言執行完了報告書」を提出。
収支報告・財産分配報告・残余財産の取扱いを明記します。


4. 行政書士が選ばれる理由(他士業との違い)

比較項目行政書士弁護士司法書士
官公署手続◎ 行政専門△ 裁判中心○ 登記中心
相続関連書類◎ 一括作成可○ 一部作成可○ 登記書類中心
費用比較的安価高額傾向中間
トラブル対応事前予防重視紛争解決重視手続専門
地域密着性高い低め中程度

行政書士は「手続・調整・説明」に強く、トラブルになる前に防ぐのが最大の強みです。


5. トラブルを防ぐ行政書士の具体的工夫

  1. 中立的立場を維持
     相続人全員に公平に情報提供。
  2. 透明性ある報告書
     処理経過・財産分配を明確に記録。
  3. 複数士業との連携
     登記は司法書士、税務は税理士と協力しワンストップ対応。
  4. 家族との事前面談
     遺言者存命中から関係者に説明しておくことで「後の誤解」を防ぐ。

遺言執行者を行政書士に依頼するメリット

1.法令遵守で確実に実行
官公署・金融機関への提出書類に精通。

2.中立的立場で透明な処理
相続人間の利害に巻き込まれにくい。

3.相続関連業務を一括対応
遺言作成~執行~登記~農地法手続まで一貫支援可能。

遺言執行者選びのポイント(まとめ)

重要要素内容
信頼性家族が安心して任せられる人物
専門性法務・登記・行政手続の知識
中立性特定の相続人に偏らない姿勢
責任感最後まで誠実に実行する意志

おわりに

遺言を残すという行為は、「家族への想い」を形にする大切なステップです。


しかし、遺言の内容を実際に実行するとなると、法律や手続きの壁が立ちはだかり、

想定外のトラブルが起きることも少なくありません。

遺言執行者は、遺言者の意思を現実の形にする「最後の橋渡し役」です。


行政書士は、法的知識と実務経験を活かし、

相続人全員が納得できる形で遺言の実現をサポートします。


また、手続きの透明性を重視し、

家族間の誤解や感情的な対立を未然に防ぐことができます。

「誰を遺言執行者にすべきか迷っている」


「家族に負担をかけない遺言を残したい」


そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。

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