遺言書を見つけたときにすぐすべきこと|行政書士が徹底解説

目次
はじめに
相続が発生したとき、
最初の大きな分岐点となるのが「遺言書の有無」です。
そして、 遺言書を見つけた瞬間から、
家族が必ず守らなければならない法律上のルールや手続きが存在します。
しかし実際には、
- とりあえず開封してしまった
- 内容を読んで揉めそうだから隠してしまった
- 誰に相談すべきか分からなかった
といった理由から、後々トラブルに発展するケースが非常に多くあります。
そこで本記事では、
「遺言書を見つけたときにすぐすべきこと」 をわかりやすく解説します。
これらを知っておくことで、相続が円滑に進み、
家族関係の悪化を防ぐことができます。
ぜひ最後までご覧ください。
遺言書を勝手に開封しない(=家庭裁判所の検認が必要)
遺言書を見つけたときに最も大事なのは、
絶対に勝手に開封しないことです。
特に「自筆証書遺言」の場合、
封筒に入って封印されていることがあります。
しかし、多くの人はついその場で開封してしまいがちです。
■勝手に開封すると法律違反になる可能性
民法では、封印された遺言書を勝手に開封すると、
「5万円以下の過料」 を科される可能性があると定めています。
罰金ではなく過料ではあるものの、
「法律を知らなかった」では済まされない問題です。
■家庭裁判所での「検認」とは?
自筆証書遺言は、
- 偽造・変造を防ぐため
- 日付・署名・押印が正しいか確認するため
に 家庭裁判所で検認 という手続きを受ける必要があります。
※法務局の自筆証書遺言保管制度を使っている場合は検認不要
■行政書士にできるサポート
家庭裁判所への提出書類の作成、
必要な添付資料の案内などを支援できます。
早い段階で専門家に相談するとスムーズです。
遺言書の種類を確認する(自筆・公正証書・秘密証書)
遺言書には3つの種類があり、
それぞれ手続きが異なります。
■(1)自筆証書遺言
自筆で書かれた遺言書。封印されていることも多い。
→ 家庭裁判所の検認が必須
■(2)公正証書遺言
公証役場で作成された遺言書。
原本は公証役場で保管されている。
→ 検認不要ですぐに相続手続きへ進める
■(3)秘密証書遺言
内容は秘密だが、存在だけ公証役場で証明した遺言書。
ほとんど使われない。
→ 家庭裁判所の検認が必要
遺言書の種類によって流れが180度変わる
公正証書遺言ならすぐに手続きが進みますが、
自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要になり、
相続開始までに数週間〜1か月以上かかることもあります。
遺言書を見つけた状態で最初にやるべき判断
- 公正証書かどうか?(公証役場の正本・副本があるか)
- 自筆証書か?(自署・押印のある紙の束など)
- 法務局の保管制度を使っているか?(封筒に記載がある場合も)
不明な場合は専門家に写真を送って確認してもらうのが確実です。
相続人全員へ遺言書を見つけた事実を共有する
遺言書を見つけた時点で、
相続人へ速やかに共有する必要があります。
■遺言書を隠すと大トラブルへ発展
- 自分に不利な内容だったので家族に知らせなかった
- 兄弟間で情報を握りつぶした
- 遺留分で揉めそうだから黙っておいた
このようなケースは、後に発覚すると
「遺言書の隠匿」「相続欠格事由」 が問題になる可能性もあります。
■共有の方法はどうする?
・LINEの家族グループ
・メール
・書面での通知(望ましい)
特に検認手続きでは 相続人全員へ家庭裁判所から通知が届く ため、
早めに知らせておくことでトラブルを避けやすくなります。
遺言内容を正しく読み解き、専門家の確認を受ける
遺言書の内容は、一般の方が読むと意外と誤解しやすいものです。
■よくある誤解
- 財産の記載が一部だけで、残りの財産の扱いが不明
- 言葉の使い方が曖昧で解釈に揺れがある
- 遺留分の侵害の有無を誰も確認していない
こうした誤解から、
せっかくの遺言書が揉め事の火種になることもあります。
■専門家が確認すべきポイント
行政書士は以下内容をチェックします:
- 遺言書が法的に有効か
- 日付・署名・押印は正しいか
- 相続人・受遺者の記載に漏れはないか
- 財産目録の漏れはないか
- 解釈のぶれが出そうな文言はないか
- 登記・相続税・預金解約などをするうえで問題無いか
※登記の申請は司法書士の先生が担当します
■遺言書の読み違いは後の手続きに大きく影響
特に、「不動産が複数あるケース」や、
「農地」「山林」が絡む場合は注意が必要です。
遺言の言葉ひとつで、
- 農地法の手続き
- 遺留分侵害額請求
- 不動産登記
などが大きく変わることがあります。
財産を調査し、遺言書に書かれていない財産も把握する
遺言書があっても、
そこに全財産が書かれているとは限りません。
■よくあるケース
- 生命保険の記載がない
- 預金口座が複数ある
- 休眠口座がある
- 不動産が登記簿と食い違っている
- 相続開始前に名義変更した通帳がある
- 有価証券(株・投資信託)が残っている
遺言書は最低限の財産だけ書かれていることが多く、
抜けている財産があると、
その財産だけ別に遺産分割協議が必要になります。
■財産調査の流れ
- 不動産 → 登記事項証明書、名寄帳
- 預金口座 → 銀行への照会
- 有価証券 → 証券会社の残高証明
- 生命保険 → 加入先の確認
- 借金の確認 → 信用情報・金融機関からの通知
- 車両・貴金属・農機具など
特に農家の場合、
「農地」「耕作放棄地」「農業委員会の利用権設定」などがあるため、
行政書士が関わるケースもあります。
遺言書を見つけた後の流れまとめ
遺言書を見つけた直後の流れは次のようになります。
- 開封しない(=検認が必要か判断)
- 遺言書の種類を確認
- 相続人へ共有
- 専門家の確認を受ける
- 財産調査を行う
- 相続手続き(不動産・預金・車両など)
- 登記・税務・行政手続へ進む
遺言書があると手続きは簡単になると思われがちですが、
実際には 「遺言書の取り扱い次第で難易度が大きく変わる」 のが現実です。
よくある相談
- 自筆証書遺言を家の仏壇から見つけた
- 公正証書遺言があると思っていたが、実は別の遺言書も存在した
- 兄弟の誰かが遺言書を隠していた
- 不動産が複数あり、内容の読み取りが難しい
- 農地・山林が絡んでおり、農業委員会の手続きが必要
特に農地が絡むと、相続+農地法のダブル手続きになるため、
行政書士のサポートが大きな助けになります。
まとめ:遺言書を見つけたら最初の判断がすべてを左右する
遺言書を見つけたときにやるべきことは、以下の5つです。
- 勝手に開封しない
- 種類を確認する
- 相続人へ共有する
- 専門家の確認を受ける
- 財産調査を行う
遺言書は単なる紙ではなく、
家族の最後の意思を守るための重要な法律文書 です。
取り扱いを誤ると、
・相続トラブル
・手続きの遅延
・費用負担の増加
につながります。
相続が発生したばかりで心も落ち着かない状況だと思いますが、
最初に正しい手順を踏むことで、
その後の相続手続きが大きくスムーズになります。
遺言書を見つけた場合、
行政書士として手続きの流れや必要な書類のご案内も可能です。
お困りの際は、早めのご相談をおすすめします。


