行政書士法とは?行政書士の業務範囲

目次
はじめに|行政書士法を正しく理解することの重要性
行政書士とはどのような専門家なのか。
行政書士に依頼できる業務はどこまでで、何ができないのか。
一般の方にとって、
行政書士の業務範囲は非常に分かりにくいと思います。
これは、行政書士法が定める業務が多岐にわたり、
法律の条文だけではイメージがしにくいためです。
また、行政書士は弁護士・司法書士・税理士など他士業との“境界線”があり、
法律上できる業務とできない業務が明確に区別されています。
特に近年は、相続手続き・農地法申請・建設業許可・入管業務など、
行政手続きの複雑化により行政書士の役割が注目されるようになりました。
本記事では、行政書士法・行政書士の業務範囲・できること・できないことを、
解説します。
行政書士法とは?目的・定義・国家資格としての位置づけ
■ 行政書士法の目的(第1条)
行政書士法は次のような目的を掲げています。
「行政書士の制度を定め、行政書士の業務を適正に行わせることにより、
国民の利便に資すること」
つまり、行政書士制度は国民の生活や中小企業の活動を支えるために存在しています。
■ 行政書士の定義(第2条)
行政書士とは、
官公署に提出する書類、
権利義務、
事実証明に関する書類を作成し、
報酬を得て業務として行う専門家とされています。
シンプルに言うと、
- 役所に出す書類
- 事実を証明する書類
- 法律効果を持つ書類
を作成するプロフェッショナルです。
■ 行政書士は国家資格
行政書士は国家資格者であり、
日本行政書士会連合会に登録して初めて業務を行うことができます。
資格を持っていても登録しなければ“行政書士ではない”ため注意が必要です。
行政書士の業務|行政書士法で定められた3本柱
① 官公署に提出する書類の作成(第1号業務)
行政書士の業務の中心です。
年間数千種類以上の行政手続きが対象になります。
▼ 代表的な書類
- 建設業許可
- 農地法3条・4条・5条申請
- 農振除外申出
- 風俗営業許可
- 産廃許可
- 入管(在留資格)申請書類の作成
- 自動車登録
- 車庫証明
② 権利義務に関する書類の作成(第2号業務)
契約内容や法律関係を明確にする書類を作成する業務です。
▼ 代表例
- 遺産分割協議書
- 内容証明郵便
- 示談書・和解書
- 会社定款
- 雇用契約書
- 委任状
- 贈与契約書
- 離婚協議書(非訟業務に注意)
③ 事実証明書類の作成(第3号業務)
事実を証明するための書類を作成する業務です。
▼ 例
- 財産目録
- 相続関係説明図
- 家系図
- 交通事故の状況図
- 確定日付のある内容証明(郵便局手続き)
行政書士にしかできない“独占業務”とは?
行政書士法第19条に「他の法律により制限されていない限り行政書士が独占して行う業務」と定められています。
主な独占業務
- 官公署に提出する書類の作成
- これらの書類の提出手続きの代理
- 相談業務(書類作成に伴うもの)
行政手続きの申請代理ができるのは行政書士だけです。
特に近年は 電子申請 の広がりで、
行政書士の重要性が高まっています。
行政書士ができないこと
行政書士は「何でもできる」わけではありません。
他士業の独占領域が明確に定められています。
① 訴訟(裁判)の代理はできない
これは弁護士の独占分野です。
- 裁判所での代理
- 調停・訴訟の代理
- 法的トラブルの交渉代理
これらは行政書士にはできません。
② 不動産登記の代理はできない
司法書士の独占業務です。
③ 税務申告の代理はできない
税理士の独占業務です。
④ 社会保険・労働保険の手続き代理はできない
社会保険労務士の独占領域です。
⑤ 入管手続きの代理は“申請取次行政書士”のみ可能
行政書士であっても、入管業務の代理には資格が必要です。
行政書士は相談業務ができる資格
行政書士法では「相談」を業として行うことが認められています。
- 相続の相談
- 農地法の相談
- 建設業許可の相談
- 会社設立の相談
- 契約書の相談
弁護士法72条の「非弁行為」にならない範囲で、
行政手続き・書類作成に関する幅広い相談に対応できます。
行政書士に依頼するメリット|市民に最も身近な法律家
行政書士は「街の法律家」と呼ばれます。
● 書類作成の専門家
行政手続きは複雑で、専門用語も多いため、
一般の方では対応できないことも多いです。
● 行政との距離が近い
行政書士は行政の仕組みを熟知しており、
スムーズに手続きを進めることができます。
● 手続きの窓口が広い
年間1万件以上ある手続きの大部分をサポートできます。
行政書士法が定める「秘密保持義務」と「品位保持義務」
行政書士には強い倫理規定が課されています。
① 秘密保持義務(第12条)
業務で知り得た秘密を第三者に漏らしてはならない。
郡山市のような地方都市では、プライバシー保護が特に重要です。
② 品位保持義務(第10条)
行政書士としての信用と品位を害する行為をしてはならない。
行政書士は公共性の高い専門職であるため、
信頼維持のための行動が求められます。
行政書士は時代と共に業務が変化する“進化する国家資格”
行政書士の業務は、時代と共に大きく変化しています。
■ ① デジタル社会への対応
- 電子申請
- DX化
- オンライン相談
- データ連携
行政書士は行政手続きのデジタル化に必須の存在になりつつあります。
■ ② 外国人増加による入管業務の需要増
郡山市でも技能実習生・留学生の増加により、
入管業務・在留資格の相談が増えています。
■ ③ 相続・遺言業務の拡大
少子高齢化により、
相続・遺言・成年後見は行政書士の主要業務になっています。
■ ④ 農地・土地関連業務の増加
地方では、農地転用・農振除外・空き家問題が増え、
行政書士の専門性がより求められる時代になっています。
まとめ|行政書士法を理解すれば行政書士の役割が見えてくる
行政書士法を理解すると、
- 行政書類作成の専門家
- 行政手続きの代理人
- 権利義務・事実証明書類の作成者
- 市民に最も身近な法律家
- 他士業との境界線が明確な専門職
であることがわかります。
行政書士は、企業・個人・外国人・農家・相続人など、
あらゆる場面で必要とされる存在です。
福島県郡山市で行政書士業務を行う中でも、
行政手続きの複雑化や少子高齢化により、
行政書士の必要性は確実に高まっています。
行政書士法を正しく理解し、
行政書士をうまく活用することで、
手続きの悩みは大きく軽減されます。


