農振除外とは?農地転用よりも難しい理由

はじめに

農地を宅地にしたい、

太陽光発電を設置したい、

事業用地にしたい——。


こうした相談で最初にぶつかる壁が 「農振除外(農業振興地域の除外)」 です。

一般の方は「農地転用すればいいだけ」と思いがちですが、

実務では農地転用よりも農振除外のほうが圧倒的に難易度が高い


というのが現実です。

本記事では、

福島県郡山市で農地転用や農振除外の申請を取り扱う行政書士の立場から、

  • 農振除外とは何か
  • なぜ難しいのか
  • どのようなケースで通りやすいのか
  • 実際の審査ポイント
  • 行政書士に依頼すべき理由

を、初心者にも読みやすく詳しく解説します。

農振除外とは?

「農振除外(農業振興地域整備計画からの除外)」とは、


農業振興のために確保されている農業振興地域(農振地域)から外すことをいいます。

農振地域は、将来にわたって農地を守るべきエリアとして市町村が指定した区域です。


この区域内の農地を宅地化する、

資材置場にする、太陽光を置く…といった


農地以外の利用をしたい場合は、まず農振除外が必要になります。

✔ 農振地域=「農業を守るエリア」

基本的に転用は認められない
例外的に「公共性がある」「やむを得ない」といった場合にのみ除外が認められる

そのため、農振除外申請は 規制が非常に強く、難易度が高い手続き です。

農地転用との違い

ここで混同されがちな制度が「農地転用」です。


簡単に比較すると以下のようになります。

手続き審査機関内容難易度
農地転用(4条・5条)都道府県または市町村農地を宅地等に“利用転換”する許可中程度
農振除外都道府県または市町村“農地そのものを農業振興地域から外す”非常に高い

特に郡山市では、


農振除外が通れば農地転用5条許可は原則通る


と言われるほど、農振除外が最大の難関です。

※実務上、農地転用可能の見込みがないと農振除外の申請も降りません

農振除外はなぜ難しいのか?

農振除外が難しい理由は次の5つです。


(1)農業振興計画に反するため

農振地域は市町村の農業計画に基づいて「守るべき農地」として設定されています。


そのため、個人の都合で簡単に除外を認めると、


農業用地が次々に失われてしまうため慎重に判断されます。


(2)エリアによっては「原則不可」

郡山市など福島県の多くの自治体では、


以下のような地域は 除外の対象外(事実上不可) とされています。

  • 農振農用地区域
  • 特に良好な農地(基盤整備されている田など)
  • 周辺一帯が農地として維持されている地域

つまり、場所によっては最初から除外が認められない ケースも多くあります。


(3)毎年数回しか受付しない

農振除外は年中受け付けているわけではありません。


郡山市では例年

  • 4月頃
  • 8月頃
  • 12月頃

年3回だけ の受付となります。

受付期間を逃すと、4か月ほど遅れることになってしまいます。


(4)審査期間が長い(半年~1年)

農振除外の審査には

  • 県の農業会議
  • 農業委員会
  • 農政課
  • 都市計画課
  • 用排水管理者
  • 周辺土地権利者

など、多数の機関の確認が必要で、審査は慎重です。


(5)書類・図面が複雑で専門性が高い

農振除外には以下のような資料が求められます。

  • 現況平面図
  • 求積図
  • 土地利用計画図
  • 農地としての利用状況写真
  • 選定理由書
  • 排水計画
  • 周辺農地への影響説明資料

図面の作成や理由書の書き方によって、審査結果が大きく変わります

農振除外が認められるケースとは?

難しいとはいえ、

すべてが不許可になるわけではありません。


実務上、以下のようなケースでは認められやすい傾向があります。

ただし下記の特徴は必ず許可されるというわけではなく、

事案によってケースバイケースです。


✔(1)農地としての利用価値が低い

例:

  • 長年耕作されていない
  • 湿地・傾斜地で農業に不向き
  • 排水が悪い
  • 砂利や石が多く改良が難しい

✔(2)周辺がすでに宅地化している

  • 住宅地に隣接する1筆だけ農地が残っている
  • 道路や下水道が近い
  • 周辺が開発済みの区画

孤立した農地(ポツン農地)は除外が通りやすいです。


✔(3)公共性が高い利用目的

  • 道路・公園
  • 社会福祉施設
  • 公共設備
  • 農業振興に資する施設
  • 地域住民サービスにつながる事業

✔(4)相続後の宅地化(分家住宅など)

郡山市では、
分家住宅用地(親から子へ) は除外が認められやすい傾向があります。


✔(5)農家後継者の居住地確保として必要

農業を継ぐために農地近くに家を建てるケースも通りやすい傾向。

農振除外申請の流れ

郡山市の場合の一般的な流れを示します。

  1. 事前相談(農政課・農業委員会)
  2. 関係法令(都市計画法・建築基準法)チェック
  3. 農地の現況調査
  4. 周辺農地への影響確認
  5. 必要図面の作成(現況図・土地利用計画図・排水計画など)
  6. 申請書の作成・提出
  7. 農業委員会・農業会議・都市計画課などの審査
  8. 認定・告示
  9. 農地転用5条申請へ進む

現場調査から除外完了まで、早くても半年〜1年かかります。

最初の事前相談が大事で、

事前相談で農振除外の見込みを確認します。

農振除外を成功させるためのポイント

農振除外は専門性が高いため、

ポイントを外すと一発で不許可になります。
成功のために重要なのは次の5点です。


✔(1)“除外理由書”が最重要

実務では、理由書の説得力が審査を左右します。

悪い例:

  • 「宅地にしたいから」
  • 「相続したから」

通る理由:

  • 農地としての利用が困難である具体的理由
  • 周辺農地への影響がない説明
  • 公共性や地域貢献性の提示
  • 道路接道・排水の安全性

行政書士が最も力を入れる部分です。


✔(2)排水計画の明確化

農振除外では「周辺農地を湿害から守れるか」が重要です。


排水経路・勾配の説明が十分でないと、不許可になりやすいです。


✔(3)都市計画法(34条・43条)との整合性

郡山市の34条12号区域や43条許可制度に抵触する場所では、


実質的に農振除外は通りません。


✔(4)事前協議が成否の9割

農政課・農業委員会・都市計画課との事前相談で


「この場所は厳しい」「この方向なら可能性あり」


とアドバイスがもらえます。


✔(5)周辺農地への影響調査

現場写真・排水方向・農道幅員などを


図面+写真付きで提出することで通りやすくなります。

行政書士に依頼すべき理由

農振除外は、一般の方が自分で申請できる内容ではありません。


特に次の点が大きな理由です。

  • 図面作成が高度(地形図・排水計画など)
  • 役所との折衝が必要
  • 農地の現況調査が重要
  • 都市計画法・建築基準法との複合判断が不可欠
  • 提出時期が年2回のみのため、書類の遅れが致命的

行政書士はこれらの作業を一括して行い、
最短ルートで許可へつなげる専門職です。

郡山市周辺で農振除外を検討している方は、


早めに専門家へ相談することをおすすめします。

まとめ

農振除外とは農業振興地域から土地を外すための手続きであり、


農地転用よりも難易度が高い手続きです。

農振除外が通らないと何も始まらない。


これが実務の現実です。

ポイントは以下のとおり。

  • 農振地域は原則転用不可
  • 受付は年3回だけ
  • 審査は半年~1年
  • 理由書と排水計画が重要
  • 事前相談が成功のカギ

農振除外は一度不許可になると再申請まで半年〜1年かかります。


早めの現地調査・専門家相談が成功への最短ルートです。

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