用途地域ごとの業種制限をわかりやすく解説|この場所で開業できる?店舗・事務所・工場の注意点

目次
はじめに
店舗を出したい、
事務所を構えたい、
飲食店を始めたい、
倉庫や作業場を設けたい――。
このような事業計画を進める際に、
必ず確認しなければならないのが「用途地域」です。
用途地域とは、
都市計画により定められる土地利用のルールで、
住宅地・商業地・工業地など、
地域ごとに建てられる建物の用途を制限する制度です。
国土交通省の資料でも、
用途地域は「住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもの」とされ、
現在は13種類に分類されています。
つまり、土地や建物を所有しているからといって、
どのような業種でも自由に営業できるわけではありません。
たとえば、
静かな住宅地に大規模な工場や深夜営業の娯楽施設が建てられてしまうと、
周辺住民の生活環境に大きな影響が出ます。
そのため、建築基準法では
用途地域ごとに建築できる建物の種類を細かく定めています。
具体的な制限は、
建築基準法第48条や別表第二に規定されています。
この記事では、用途地域ごとの業種制限について、
店舗・飲食店・事務所・工場・倉庫・福祉施設などの
実務上よく問題になる業種を中心に、解説します。
用途地域は大きく3つに分けられる
用途地域は全部で13種類ありますが、
大きく分けると次の3つです。
1つ目は、住居系用途地域です。
住宅地としての環境を守ることを目的としており、
店舗や事業所には比較的厳しい制限があります。
2つ目は、商業系用途地域です。
駅前や幹線道路沿いなど、
店舗・事務所・ホテル・飲食店などの集積を想定した地域です。
3つ目は、工業系用途地域です。
工場や倉庫など、産業活動を行うための地域です。
ただし、工業系だからといって
すべての業種が自由にできるわけではなく、
危険性や環境負荷の大きい施設には制限があります。
ここで重要なのは、
用途地域の確認は単なる不動産調査ではなく、
事業計画そのものの可否に直結するという点です。
「家賃が安いから借りたい」
「駐車場が広いから飲食店に向いている」
「空き店舗だからすぐ営業できそう」
このように考えて契約を進めても、
用途地域の制限により
希望する業種ができない場合があります。
特に、飲食店、物販店、リサイクルショップ、
福祉施設、倉庫業、作業場、工場、
ナイト系営業などは注意が必要です。
第一種低層住居専用地域|最も制限が厳しい住宅地
第一種低層住居専用地域は、
低層住宅の良好な住環境を守るための地域です。
いわゆる閑静な住宅街に指定されていることが多く、
用途制限は非常に厳しいです。
建築できる主な建物は、
住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、学校、図書館、神社・寺院、
老人ホーム、保育所、診療所などです。
建築基準法別表第二でも、
第一種低層住居専用地域に建築できる建物として、
住宅、共同住宅、学校、図書館、神社・寺院、
老人ホーム、保育所、診療所などが挙げられています。
事業用として注意したいのは、
一般的な店舗や飲食店、事務所、工場は
原則として難しいという点です。
ただし、住宅の一部を利用する小規模な事務所や店舗、
いわゆる「兼用住宅」であれば認められる場合があります。
たとえば、自宅の一部で行政書士事務所、税理士事務所、
学習塾、ピアノ教室、個人サロンなどを行うケースです。
もっとも、兼用住宅には床面積や用途の条件があります。
単に「自宅だから何をしてもよい」というわけではありません。
来客数が多い業種、騒音や臭気が発生する業種、
駐車場利用が多い業種は、
近隣トラブルや建築基準法上の問題が生じる可能性があります。
第一種低層住居専用地域で開業を考える場合は、
自宅兼事務所レベルの小規模事業に限られると考えた方が安全です。
第二種低層住居専用地域|小規模店舗なら可能性あり
第二種低層住居専用地域も、
低層住宅地の環境を守る地域です。
ただし、第一種低層住居専用地域よりは
少しだけ店舗利用の余地があります。
具体的には、
一定規模以下の店舗や飲食店などが認められる場合があります。
実務上は、コンビニ、小規模な飲食店、
パン屋、美容室、クリーニング取次店などが検討対象になります。
ただし、規模や階数に制限があるため、
広い売場面積の店舗や大規模な飲食店は難しい場合があります。
また、深夜営業、騒音、駐車場の出入りが多い業種は、
用途地域上は可能性があっても、
近隣説明や他法令の確認が必要です。
第二種低層住居専用地域では、
住宅地に必要な小規模サービス店舗は可能性があるが、
本格的な商業施設は難しいと理解しておくとよいでしょう。
第一種中高層住居専用地域|生活利便施設が入りやすい地域
第一種中高層住居専用地域は、
中高層マンションなどの住宅を中心としつつ、
一定の生活利便施設を認める地域です。
低層住居専用地域よりも
建てられる建物の幅が広くなり、
大学、病院、一定規模の店舗などが可能になります。
住宅地ではありますが、
生活に必要な店舗や施設がある程度認められるため、
事業用物件として検討されることもあります。
たとえば、
クリニック、調剤薬局、小規模スーパー、学習塾、事務所、
福祉施設などは候補になりやすいです。
一方で、大規模な商業施設、遊戯施設、工場、
倉庫業を営む倉庫などには制限があります。
飲食店についても、規模や業態によって慎重な確認が必要です。
第一種中高層住居専用地域では、
地域住民向けの生活利便サービスとの
相性が比較的よいといえます。
第二種中高層住居専用地域|店舗・事務所の幅がさらに広がる
第二種中高層住居専用地域は、
第一種中高層住居専用地域よりも、
店舗や事務所の利用範囲が広がる地域です。
中高層住宅を中心としながら、
比較的大きめの店舗や事務所も建てやすくなります。
幹線道路沿いやマンションが多いエリアに
指定されていることもあります。
実務上は、飲食店、物販店、サービス店舗、クリニック、学習塾、
事務所、福祉施設などが検討しやすい地域です。
ただし、カラオケボックス、パチンコ店、風俗営業、工場、
危険物を扱う施設などは制限されることがあります。
住宅地であることに変わりはないため、
騒音・臭気・交通量・営業時間には注意が必要です。
第二種中高層住居専用地域は、
住宅地の中でも
店舗開業の可能性が比較的高い地域といえます。
第一種住居地域|店舗・事務所・小規模事業に使いやすい
第一種住居地域は、
住宅環境を保護しながら、
一定の店舗・事務所・ホテルなども認める地域です。
実務上、開業相談が多い用途地域の一つです。
飲食店、事務所、美容室、整体院、クリニック、
学習塾、福祉施設、小規模な作業所など、幅広い業種で検討されます。
ただし、住居地域であるため、
すべての事業が可能なわけではありません。
大規模な店舗、遊戯施設、一定規模以上の工場、
倉庫業を営む倉庫などには制限があります。
また、飲食店の場合は、用途地域だけでなく、
食品衛生法上の営業許可、消防法、排水設備、駐車場、
臭気対策なども確認する必要があります。
第一種住居地域は、
住宅地の中で比較的事業利用しやすい地域ですが、
住環境との調和が重要になります。
第二種住居地域|商業利用の自由度が高い住居地域
第二種住居地域は、
住居の環境を守りつつ、
より広い商業施設や事業所を認める地域です。
第一種住居地域よりも、
店舗・事務所・ホテル・カラオケボックスなどの用途が
認められやすくなります。
幹線道路沿いや
ロードサイド型店舗が並ぶエリアに指定されていることもあります。
飲食店、コンビニ、ドラッグストア、物販店、サービス店舗、
事務所、ホテル、フィットネスジムなど、
多くの業種で候補になります。
ただし、パチンコ店や大規模遊戯施設、工場、
危険物施設などは、
規模や内容によって制限されることがあります。
第二種住居地域は、
住居系用途地域の中ではかなり事業向きですが、
建物の用途変更や消防設備の確認を怠ると、
開業後に問題になることがあります。
準住居地域|ロードサイド型店舗と相性がよい
準住居地域は、
道路沿いの業務利便を図りつつ、
これと調和した住居環境を保護する地域です。
幹線道路沿いに指定されることが多く、
自動車関連施設、飲食店、物販店、事務所、
サービス店舗などと相性がよい地域です。
たとえば、自動車販売店、ガソリンスタンド、
ロードサイド飲食店、コンビニ、ドラッグストア、
整備工場などが検討されることがあります。
ただし、住居系用途地域であるため、
工場や遊戯施設、風俗営業、危険物施設などについては制限があります。
準住居地域は、
車で来店する業種や幹線道路沿いの店舗開業に向いている地域といえます。
田園住居地域|農業と住宅が調和する地域
田園住居地域は、
農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域です。
国土交通省の資料でも、
田園住居地域は
「農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域」と説明され、
住宅に加えて
農産物の直売所などが建てられる地域とされています。
この地域では、
低層住宅を中心としながら、
農産物直売所、農家レストラン、農産物の集荷・貯蔵施設、
農機具収納施設など、農業関連施設が認められる場合があります。
実務上は、農産物直売所、農家カフェ、農家レストラン、
加工品販売所などの相談が考えられます。
ただし、
通常の商業地域のように何でもできるわけではありません。
農業との関連性、建物規模、用途、周辺環境との調和が重要です。
田園住居地域で事業を行う場合は、
農業関連ビジネスかどうかが大きな判断ポイントになります。
近隣商業地域|地域住民向け店舗に向いている
近隣商業地域は、
近隣住民の日用品の供給を主な目的とする商業地域です。
スーパー、コンビニ、飲食店、美容室、クリニック、
学習塾、事務所、銀行、店舗兼住宅など、
多くの業種で利用しやすい地域です。
住宅地に隣接する商店街や
生活道路沿いに指定されていることも多く、
地域密着型の店舗開業に向いています。
ただし、商業系とはいえ、
危険性の高い工場や
大規模な風俗営業施設などは制限される場合があります。
また、飲食店の場合は、
騒音・臭気・駐車場・深夜営業の問題が発生しやすいため、
近隣対応が重要です。
近隣商業地域は、
飲食店・物販店・サービス業の開業候補地として
非常に使いやすい地域です。
商業地域|最も商業利用しやすい地域
商業地域は、
店舗、事務所、飲食店、ホテル、映画館、百貨店、娯楽施設など、
商業活動の中心となる地域です。
駅前、中心市街地、繁華街などに指定されることが多く、
業種の自由度は非常に高いです。
飲食店、バー、居酒屋、ホテル、オフィス、クリニック、エステ、
物販店、カラオケ、アミューズメント施設など、
多様な業種が検討できます。
ただし、商業地域でも無制限ではありません。
工場や危険物施設などについては、
内容によって制限があります。
また、風俗営業や深夜酒類提供飲食店営業などを行う場合は、
用途地域だけでなく、
風営法、警察署への届出・許可、
保護対象施設との距離制限などを確認する必要があります。
商業地域は、店舗ビジネスには最も向いている地域ですが、
許認可や消防設備の確認が特に重要です。
準工業地域|幅広い業種に対応しやすい万能型
準工業地域は、
主に環境悪化のおそれの少ない工業の利便を図る地域です。
工業系用途地域ではありますが、
実務上は店舗、事務所、倉庫、工場、飲食店、物販店、
サービス業など、かなり幅広い用途に対応しやすい地域です。
郊外型店舗、物流施設、作業場、自動車整備工場、
リサイクルショップ、資材置場に近い利用、
倉庫付き事務所などの相談が多い地域です。
一方で、危険性や環境負荷の大きい工場には制限があります。
また、準工業地域には住宅も建てられるため、
騒音・振動・臭気が出る業種では近隣トラブルに注意が必要です。
準工業地域は、
事業用不動産として非常に使いやすい地域ですが、
用途変更や消防法、騒音規制、産業廃棄物関連の確認も必要です。
工業地域|工場・倉庫に向いているが住宅も可能
工業地域は、
主に工業の利便を図る地域です。
工場、倉庫、物流施設、作業場などに向いています。
製造業、資材保管、運送業、整備工場などの
事業用地として検討されることが多いです。
一方で、学校、病院、ホテルなどは制限される場合があります。
住宅は建築可能ですが、
もともと工業系の土地利用を想定しているため、
住環境としては騒音や交通量に注意が必要です。
工業地域で事業を行う場合は、用途地域だけでなく、
工場立地法、消防法、危険物規制、騒音・振動規制、悪臭防止法、
産業廃棄物処理法など、業種ごとの法令確認が重要になります。
工業地域は、
製造業・倉庫業・物流業に向いている地域です。
工業専用地域|住宅・店舗には不向き
工業専用地域は、
工業の利便を最優先する地域です。
大規模工場、物流施設、危険物を扱う施設など、
工業系用途に特化した地域です。
一方で、住宅、共同住宅、学校、病院、ホテル、
物販店舗、飲食店などは原則として厳しく制限されます。
名前のとおり、工業専用の地域と考えるべきです。
そのため、工業専用地域にある建物を
「店舗にしたい」
「社員寮にしたい」
「飲食店にしたい」といった相談では、
用途地域上のハードルが高くなります。
工業専用地域は、
工場・物流施設には向いているが、
一般的な店舗開業には不向きな地域です。
用途地域だけで判断してはいけない理由
ここまで用途地域ごとの業種制限を見てきましたが、
実務では用途地域だけで判断してはいけません。
なぜなら、
実際に事業を始めるには、
次のような確認も必要になるからです。
まず、建物の用途変更です。
たとえば、以前は事務所だった建物を飲食店にする場合、
建築基準法上の用途変更が必要になることがあります。
用途変更が必要になると、
確認申請や消防設備の追加、
避難経路の確保などが問題になります。
次に、消防法です。
飲食店、福祉施設、宿泊施設、物販店などでは、
消火器、自動火災報知設備、誘導灯、避難経路などの確認が必要です。
古い建物を借りる場合、
開業前に追加工事が必要になることもあります。
さらに、各種営業許可です。
飲食店であれば食品衛生法上の営業許可、
美容室であれば保健所への届出、
古物商であれば警察署の許可、
旅館業であれば旅館業法、
福祉施設であれば福祉関係法令の指定・届出などが必要になります。
また、条例や地区計画、特別用途地区にも注意が必要です。
国土交通省の資料でも、
特別用途地区では条例により
用途地域の制限を強化または緩和できるとされています。
つまり、同じ用途地域であっても、
市町村の条例や地区計画によって、
できる業種・できない業種が変わる可能性があります。
開業前に確認すべきチェックポイント
事業用物件を借りる・買う前には、
最低でも次の点を確認しましょう。
まず、都市計画図で用途地域を確認します。
市町村の都市計画課や建築指導課、
インターネット上の都市計画情報で確認できる場合があります。
次に、その用途地域で希望する業種が可能かを確認します。
単に「店舗可」と書かれている物件でも、
用途地域や建物用途の問題で希望業種ができない場合があります。
次に、建物の現在の用途を確認します。
登記簿上の種類、建築確認済証、検査済証、過去の使用状況などを確認し、
用途変更の必要性を検討します。
さらに、許認可の要否を確認します。
飲食店、古物商、旅館業、福祉施設、産廃関連、風俗営業、
深夜酒類提供飲食店営業などは、
用途地域とは別に許可・届出が必要です。
最後に、契約前に行政窓口へ確認することが重要です。
契約後に「営業できない」と判明すると、
内装費、賃料、違約金、開業遅延など大きな損失につながります。
まとめ|用途地域の確認は開業前の必須手続き
用途地域は、
単なる不動産の専門用語ではありません。
その場所で、
どのような業種を営むことができるのかを決める、
非常に重要なルールです。
特に、飲食店、物販店、事務所、倉庫、工場、福祉施設、
リサイクルショップ、宿泊施設、ナイト系営業などは、
用途地域によって開業の可否が大きく変わります。
また、用途地域上は可能に見えても、
建物の用途変更、消防法、保健所の許可、
警察署の許可、条例、地区計画など、
別の法令で問題になることもあります。
事業用物件を契約する際は、
家賃や立地だけで判断せず、
必ず事前に法令確認を行いましょう。
「この物件で営業できるのか」
「飲食店に用途変更できるのか」
「市街化調整区域や農地が関係していないか」
「許認可が必要な業種なのか」
このような確認を開業前に行うことで、
契約後のトラブルや無駄な出費を防ぐことができます。
当事務所では、不動産実務に強い行政書士として、
店舗開業・事業用物件・用途地域・許認可に関する
事前確認をサポートしています。
郡山市周辺で、
店舗開業や事業用物件の利用を検討している方は、
契約前・工事前の段階でお気軽にご相談ください。
「この場所で営業できるのか」
――その不安を、用途地域と許認可の両面から整理します。

